山下さんのお宅に到着すると、お話を伺うことになっていた山下豊さんがまだお帰りになっておられず、その兄の亨さんもまだいらしてなかったので、私たちはお宅を訪ねる前に訪れた二つの神社について、豊さんの奥さんからお話を伺った。

――今日はお祭りですか?
「えぇ、そうです。田植えが終わってからですね、無事にお米が取れるようにですね、祈願祭が行われております。」
――さっき、一位樫のほうも見てきたんですけど、神社のほうで…
「いや、あそこは権現さん(一位樫のある方)でですね、こっちがお宮さんなんですよ。こっちが阿蘇神社(お宮さん)でですね、こっちが熊野権現さんといって、あの高いとこでしょ?」
――はい、
「あっちは熊野権現さんって言うんですよ。こっちがお宮さんで阿蘇神社の…分神(分社?)っていうんですかね?」
――午前中は阿蘇神社で、何か…「願立て」?が…
「そうです。願立てと言います。こっちのほうではね」
――それはえっと、夏の間の安全祈願みたいなものですか?
「それとですね、秋まで皆が健康で作物が無事に取れるようにっていう祈願祭なんです。また秋になったらですね、『お籠もり』っていってからですね、お礼のお宮さんへお籠もりするんですよ。皆で。おこもりって言うのがですね、お弁当もってって、一日あそこで遊ぶっていうかですね、過ごすんですよ。それがお籠もり」
――熊野権現さんのほうですかね?さっきそこで、こちらの方に会って、今日お昼から集まりがあると聞いたのですが。
「お宮さんが終わったらですね、そこでもまたお籠もりがあるんですよ。祈願祭がですね。」
――それは別々の神様なんですか?
「こっちは(阿蘇神社)ですね、上十町区のお宮さんで、権現さんのほうはですね、この部落の神様なんですよ。だからこちらが先に終わってから権現さんのほうに、この部落の方だけがですね、権現さんのほうに上がられます。」
――熊野三社とは何か関係があるんですか?
「分神…とは聞いてますけど…」

――ここで奥さんの話は終わり。引き継がれている儀礼については詳しく聞けたが、やはり神社の確かな由来ともなると、なかなか知っている方も少ないのかもしれない。

 この後、わざわざ奥さんが用意してくださっていた、昔のお祭りのときなどに食べていたご馳走を頂いた。


ご馳走
後日、真似して作ってみたが、どうにも煮物の生姜の味が薄かった…。
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