歴史と異文化A   レポート       担当    山口 哲    森井 伸夫     
                                記録編集  山口 哲            
 担当地区   佐賀県伊万里市瀬戸町早里村
 
 7月4日(土曜)に行きました、早里村での調査の結果を報告します。
 
 
 早里村: 早里村は(はやり)とよびます。
          この村の名前の由来は、港の潮の流れが速いことからそう呼ばれるよ
          うになったそうです。
          昔は、塩田がたくさんあり、塩の生産が盛んでした。
          <塩の作り方>
          塩田から塩を作るには、まず、海水を塩田に引き込み、塩田の中の砂
          の中に海水を含ませます。そして、その海水を乾かします。このこと
          を繰り返すことにより、塩田の中の砂の中に、10〜20倍にもこく
          なった塩水がたまります。この中から、水で溶かして塩を取り出し、
          大きな鉄製の釜の中に入れて、炊くことにより、塩を作るのだそうで
          す。ちなみに、その煙突は、一つしか残されていませんでした。 
          しかし、現在は、塩田は、ほとんどなくなりました。その理由は、塩
          田が増えすぎたため、塩の単価が落ちたことや、その時が終戦直後だ
          ったため、塩田を、稲作ができるようにへと代えてしまう人が多かっ
          たためだそうです。
           ちなみに、この村に津上、犬塚姓が多いのは、約300年前に、福岡県
          の姪浜から、塩田を引くために早里村に来たためだそうです塩田を開
          いた末裔ということです。
 
 
 水田利用:  現在でも、この村では、稲作農業が多く見られます。元々、降水
             量が少ないで、各村ごとに、ため池を作り、水当番により、厳し
             く管理され、少しずつ大切に使われています。しかし、現在では
             政府の減反政策により、休耕もしくは転作を余儀なくされている
             そうですが、昔からの稲作を止めることは、大きな抵抗があり、
             難しいそうです。ですから、裏作(ゴボウ、シソ、キュウリ。ト
             ウマメ、高菜)を増やすことで、稲作を続けているとおっしゃっ
             ていました。
 
 
 築港    :  昔は、(200年くらい前)魚も多く、賑わいがあったそうですが、
             港が佐世保へと移り、いまでは寂れてしまったそうです。
 
 
 あだ名:    この地方では、古名(コナ)といいます。
                   
    タコボチ(蛸ぼち);昔、大きなタコがその池に住んでいて、よく村人の乗
                        る船をひっくり返していたという伝説があるのでこう
                        言われるようになった。                 
         
    キドングチ(騎渡口);海から連れてきた馬を、この場所で降ろしていた
                          ために、こう呼ばれた。    
 
    マキシマヤマ(牧島山);牧島は、昔、鍋島藩が、馬の放牧として使い、昔
                            から、古名で呼ばれていた。
          
    デンボリ(連掘);レンコンを育てていた、深い堀のこと。
 
    シンドテ(新土手);昭和初期に作られた新しい土手。
 
    フクボトケ(福仏);江戸時代中期に、ワカキソからいらした僧のために、
                        多くの寺が作られた場所をこういう。
          
    ラクセッキ(落石);本当に落石が多く、こう呼ばれた。
         
    オオキボク(大木);400年前まで存在した神木のこと。村騒動の原因とし
                        て切られてしまい、その木の跡をこう呼ぶ。
 
    タカイワ(高岩);高い岩の上に作られた家。いえ毎に、自分達で名前をつ
                      けていた。
 
    タカイワミチ(高岩道);高岩へと続く道。この名前も自分達で付けた。
 
    ヨシワラ(吉原);田が区切られたところに建てられた家の名前。もちろん
                      自分達でつけた。
 
    マキシマガラミ(牧島搦);牧島の海沿い。
 
           搦(カラミ)とは:”干拓”のこと。佐賀県南部では、”籠(コモ
                             リ)”と呼ばれる。この2つの区別は、当時、鍋
                             島藩の本家と分家が、自分達の領地を分けるた
                             めに決めた。
 
    デンデンガラミ(塩田搦:田々搦);どちらが本当かは、不明である。
 
    ハヤリザキ(早里岬);早里村にある岬。
  
    オオフナヅリ(大船づり);不明。
 
    ロッポウザカ(六方坂);6方向に別れた、または6方向に行くことができ
                            る坂。
 
    ウレシノシンデン(うれしの新田);明治以降に開かれた新田のこと。うれ
                                      しのさんが開いたからそう呼ばれた。
 
    カワゾエシンデン(川添新田);川添さんが開いた新田。
 
    エゴ(えご);本来川だったところを、深いところだけを残し、浅いとこ
                  ろを埋め立ててクリークとした用水路のこと。
 
   シオアソビ(潮遊び);塩水(海水)と田の真水とを混ぜるところを作り、
                         田に海水が入らないようにした、ため池のこと。
 
   サカイガワ(境川);北の唐津、南の肥前とを分けた川。この川を挟んで、
                       村同士の争いがいくつもあり、投石などが行われてい
                       た。(50年ほど前)
 
   ユビノクチ(指の口);岩を崩して埋め立てたときに、指の形に似てたため
                         にこう呼ばれた。
 
   ハヤリハマ(早里浜);明治以降に作られた、塩田の名。
 
          浜(ハマ):この地方では、塩田のことを、”浜(ハマ)”と呼ぶ。
 
   ナガバタケ(長畑);畑の名前。確かに長い畑だ。
 
   ヒトギレ(人切れ);畑の名前。
 
   ウマゴメ(馬込);馬を船に乗せるために作られた場所。
 
   ゴンベダニ(ごんべ谷);谷の名前。
 
   ヤゴノウラ(やごの浦);浦(谷)の名前。
 
 情報提供   松尾 美知子さん(大正14生)、  島本さん 、  
            松尾 道之介さん一家、   犬塚さん
 
 以上、早里村のレポートです。       
                 記録者 山口 哲   
                 地図製作者 森井 伸夫               
 
 歴史と異文化感想              執筆   山口  哲
 
 
 7月4日(土曜)僕たちは、佐賀県伊万里市瀬戸町早里村へと行きました。正直
 いいますと、田や、山や、川、掘などのしこな(早里では、古名というそうで
 す)など、ある事すら知らず、また、初めて聞いたこともあり、調査は、難し
 くなるだろうと思われましたが、すごく協力的な早里むらの方々のおかげで、
 ある程度うまくできたと思います。また、何人かのお年寄りからは、しこ名以
 外にたくさんの事柄を聞けたことが、何よりも勉強になりました。
 
 早里村の方々のほとんどの人がいうことは、正直、聞き取りにくいところが多
 いのですが、僕の出身が、佐賀に近いこともあり、何とか文字に直すことがで
 きました。やはり、方言の中にも、川を渡ると大きく変わることがあるのには
 、驚きました。
 
 例) イタチクウ(イタチ食う?):どこかに行くこと
 
 事前に連絡していたにもかかわらず、生産組合長さんが留守で、一番詳しいで
 あろう人から話を聞けないこともあり、また、「知らん」の一言であしらわれた
 りされました。しかし、ほとんどの方々が協力してくれたことがありがたいこ
 とでした。
 
 以下、自分たちの行動と、村の人々が話されていたことを、記録していきます。
 
 バスをおりて、僕たちは、山道を歩き、早里村へと向かいました。早里村は、
 ほとんどが畑や、田んぼばかりのところで、移動にかなりの時間がかかったこ
 とを覚えています。
 
 村について、始めに生産組合長さんをたずねました。しかし、2人の人に連絡し
 ていたにもかかわらず、不在で、仕方なく僕たちは、近くの家を訪ねることに
 しました。生産組合長さんから紹介してもらっていたおじいさんにお話を聞こ
 うとしましたが、小字しか知っておられず、ほかの家を訪ねることになりまし
 た。
 
 そのほかの家を訪ねる途中で、田んぼの中で作業をしていらっしゃるおばあさ
 んを見かけたので、お話を伺いました。
 
 犬塚さんのお話
 早里村は、昔は海で、江戸時代に鍋島の殿様が埋め立てて、今のようになった
 そうです。また、あだ名のお話では、新土手、福仏、タカボチ(タコボチ)、
 ラクセッキ、大き木のことを教えていただきました。その他には、昔から、こ
 の地方は雨が少なく、台風もあまり通らないため、慢性的な水不足が続き、水
 の確保には、苦労したそうです。今では、飲み水は水道のおかげで、苦労はし
 なくなったそうですが、農業用水は、昔からあるため池の水を使っているそう
 です。このため池の水は、見ず当番と呼ばれる人が、責任をもって管理してい
 たそうです。あと、昔(おばあさんが子どものころ)は、お金など必要なく、
 今の資本主義経済には、お金を稼がないといけないという点で、あまり賛成で
 はないとおっしゃっていました。特に、昔は家ではほとんどゴミが出ず、たと
 えでたとしても、家畜である牛や、畑にまいて利用していたそうです。そして、
 息子さんや、お孫さんが農業から遠ざかろうとしてしまうこと、お嫁さんが来
 てくれないことが悩みだとおっしゃっていました。
 
 
 この話を、田んぼのあぜ道で二時間ほど聞いていました。お昼に近かったので、
 他のところへと向かいました。昼食をとり、松尾さんのお宅を訪ねました。
 
 松尾さんのお話
 松尾さんのお宅では、四人の方々と、薬屋さんが協力してくださいました。あ
 だ名(ここで古名ということを教えてもらえました)は、キドングチ、マキシ
 マヤマ、デンボリ、タカイワ、ヨシワラ、高岩道、牧島搦、デンデンガラミ、
 早里崎、大船釣り、ウレシノシンデン、六方坂、川添新田、エゴ、潮遊、境川、
 指の口などを教えてもらいました。
 
 
 最後に、津上巌さんのところを訪ねました。津上さんは、ご自分の姓について
 大変興味をお持ちであり、大変参考になりました。
 
 津上さんのお話
 津上姓、犬塚姓の由来、早里浜、長畑、人切れ、堀切、馬込め、ゴンベ谷、ヤ
 ゴの浦のことなどを教えてもらいました。
 
 以上が、行動記録及び話の記録です。大変勉強になりましたが、反省すべきと
 ころは、一つのところに時間をかけてしまい、多くの人と話せなかったことで
 した。ですが、この調査はかなりうまく行けたと思います。    
 
                                                        以上
 
                                 記録 山口 哲     
                                                    
 
 歴史と異文化感想   森井伸夫
 
 
  7月4日(土)に僕たちは佐賀県伊万里市瀬戸町早里に、私称地名[しこ名
 (現地では古名)]を調べに行きました。
 
  まず生産組合長さんに電話でご紹介していただいた人のところにいったとこ
 ろ、連絡もなくお邪魔したので大変驚かれた様子でしたが、とても協力的で
 した。ただ、残念な事に農家でいらっしゃらなかったので、小字の事しかご存
 知ありませんでした。
 
  それからその方が別の方を紹介してくださったので、その方を訪ねようとした
 ところ、田圃におばあさん(自称:犬塚さん)がいらっしゃったので、その方に
 お話を伺おうという事になり、お話を伺ったところ、この辺りが昔は海であり、
 江戸時代に塩田として栄えていた事やしこ名を幾つか教えて下さいました。
  佐賀弁はわかりにくいと聞いてはいましたが、実際に聞いてみると予想をはる
 かに凌ぐくらいはやくてわかりにくいでした。そのおかげでしこ名の正確な位置
 がわからなかったりしました。(あとの方々のお話などで、大体は把握できまし
 た。)
   聞いたしこ名:シンドテ(新土手)、フクボトケ(福仏)、タコブチ、オオキ
                 ボク
 
  犬塚さんに2時間ほどお話を伺ってから、先に紹介された方のところを伺った
 ところ、その方(松尾さん)々は調査に非常に協力的で、しこ名の位置などを
 地図を指して教えて下さいました。また、この辺りではしこ名のことを古名と
 呼ぶ事も教えて下さいました。また、たまたま来ていた薬屋さんは歴史の事に
 大変興味をお持ちでいらっしゃって、搦のことなどを教えて下さいました。
   聞いたシコ名:キドンクチ(騎渡口)、デンボリ、タカイワ(高岩)、タカイ
                 ワミチ(高岩道)、ロッポウサカ(六方坂)、
 
  それから、田圃のおばあさん(犬塚さん)に紹介していただいた津上さんとい
 う方のところへ伺ったところ、津上さんは自分の姓の由来について調べていて、
 この辺りについても調べていらしていたので、先の方々の方では聞けなかった、
 田圃以外のしこ名について伺うことができました。
   聞いたシコ名:ナガバタケ(長畑)、ヒトキレ(人切れ)、ホリキリ(堀切)、
                 ナガウラ(長浦)
 
   全体を通しての感想は、この調査は(授業の関係でできませんが、)涼しい秋
 頃にした方がいいということと早里の方たちが親切で調査に協力的だったため、
 調査がスムーズにはこびましたが、一人一人に時間をかけすぎて多くの人のお話
 を伺うことができなかった上に、お話を伺った方にもかなりご迷惑をかけてしま
 ったことでした。
 


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