服部英雄のホームページ 木邨光宏先輩による紹介です。 (TUSACニュース2008春季号・東京大学スキー山岳部ニュースより) 峠の歴史学−古道を訪ねて 服部英雄著 佐々成政は、本当に厳冬期の ザラ峠・黒部・針の木を越えたの か。歴史学者の著者は、この通説 に挑んだ。そして結論。成政が越 えたのは乗鞍の北の「古安房峠」。 そこにはザラと呼ばれる崩壊地も あった。 古安房峠から沢渡に下り、桧峠 を越えて大野川、さらに祠峠を越 えて奈川の谷から稲核へ。それは 山県昌景率いる武田軍の飛騨侵攻 にも利用された古鎌倉街道だった という。 現代の目からみれば紆余曲折を 地でいくようなルートだが、昔の 街道は維持管理が容易で、臆病な 牛も通行可能というのが最大の要 件であった。崩壊を繰り返し、近 年通行止めが多い徳本峠道が、明 治初期までは小嵩沢山を通る尾根 道だったというのもうなずける。 在学中サマースクールの先生も 勤めたという著者は、文献史学の 手法に加えて、地元の古老を尋ね、 埋もれた古道を探索していく。書 名は地味だが、内容はスリリング。 VSAの下、一の瀬牧場に「野麦 峠」の脇街道が通っていたという 指摘も興味深い。 朝日選書八三〇 一四〇〇円 (木邨光宏 昭41)