長崎県南有馬町監修/石井 進・服部英雄編 「原城発掘一西海の王土から殉教の舞台へ−』 新人物往来社,2000年3月刊、四六判.228首.2200円 (抄録) 天草・島原一揆は,かくも日本史上に名高い事件であり ながら,その実態についてはいまだによくわかっていない ため,一揆の性格についても評価が定まっていない。その 最大の理由は,現在われわれに残された文献史料が限られ ていることにある。一揆を鎮圧した幕府や諸大名の側の記 録は豊富だが,何よりも一揆を引き起こした当事者たちの 声を伝える史料がわずかにしか残されていないのである。 文献史料に頼る限り,一揆で失われた人々の声は,永遠に 封印されざるをえなかった。 しかしながら,近年の原城や日野江城の発掘調査から, さまざまな新事実が明らかとなり,その封印が解かれつつ ある。 「少なくとも,島原の乱のときの原城は,従来いわれて きたような,石垣も建物もない城ではなかった」(服部英 雄−222頁)。 本書では,発掘調査に裏づけられたこの共通認識をもと に,文献史料によって示された従来の研究成果の見直しを はかりつつ・それぞれの報告者が原城の性格・機能・成立 年代・そこに籠城した人々の階層や籠城生活,天草・島原 一揆の意義などを縦横に論じている。 (以下略) (福田千鶴)