歩き、見、ふれる歴史学レポート
(調査テープ解析版)
於 佐賀県佐賀郡大和町八反原
対話者1 古賀 様
対話者2 水田 様
1TE02101 黒田 直樹
1TE02103 高祖 靖臣
対話者1「こけ、家の一軒しかなかけん。こいか、この川、この川沿いたい。この川沿いやっけんが、そんヨンジョイさんが、こう行って、テルシャンがここんにき。こい池じゃなかか?」
高祖「これが畑で。」
対1「これが池ないば、養殖池になっぱいな。」
黒田「なにを養殖してるんですか?」
対話1「やまめ.....」
対話1「そいけん、こいが、こいがなんたい、ネズミダニになったい。もうちょいこっちにもあったい。」
対話者2「ヤマメ養殖のしたさん、したに谷が...」
高祖「ああ、こう谷が。」
対話1「この谷か。きゃあしゃんなかたい。これになったい。こいが山のあいなかやっけんな。」
対話1「こけ、こけ川のあったいな。これが藤島と八反原の境のやっけんね。」
対話2「ちょっとこいじゃ分からんかな。」
(一同笑)
対話1「サキノイさんの上や?」
対話2「うん。」
対話1「ありゃあ、あの、こっちて言よったろ。ケモンドメていよったろ?あの、...」
対話2「いや、八反原の上さ。あの、アソトメさんの上、ありゃあ、カンザンの、どがんじゃいろ。」
黒田「じゃあ、ほかの質問を。山の中に切り開いた田んぼは、何と呼んでましたか?普通に。」
対話2「ヤマダて。」
黒田 「ヤマダ。」
黒田「圃場整備をする前の田んぼはなんと呼んでいましたか?」
対話1「この辺のはマエダて言いよった。」
黒田「マエダ。」
対話2「マエダて。あの、停留所の前ん方は、ムカイダて。」
高祖「停留所の方がムカイダ。」
対話1「停留所のそばがムカイダ言うとたい。」
対話2「ムカイダて。」
対話1(笑)
対話1「停留所のこけあったろが、こいがムカイダたい。こいが停留所やっけん。」
高祖「それじゃ、これがムカイダ。」
対話1「そいで、ここんにきがマエダて。ここんにきか、ね。」
対話1「さあ、さっさ先行かんば。」
対話2「とにかく、今は圃場整備して川が止まっとんばってんが、この川からこっちがマエダで、こっちがムカイダ。」
高祖・黒田「ああ。」
対話2「こいがお宮さんやけんが、お宮さんの前から...」
黒田「井手にはどんな名前が?」
対話1「井関や?」
対話2「井関や。」
対話1「井関は、ここんにき、あんまいなかろうもん。」
対話2「オオチデたい、オガワウチイデ。」
対話1「ああ、はあはあはあ。」
対話1「オガワ、コガワウチ。」
対話2「ウチイゼキたい。」
黒田「それから用水は?」
高祖「用水には何か名前がありましたか?」
対話1「そいが大体、昔は用水にしよったったい。こいが田ん中の用水たい。」
対話2「池のあいが。」
対話1「用水兼作水やったとん。」
対話1・2「そのオゴウチイデて言うのがさ。」
対話1「用水兼作水たい。用水と作水と。今は井戸を掘っとんけんあいばってんが、元はそいば用水に使いよったったい。。」
対話2
「こいば水に使いよったったい、あの、家のあれ。」
高祖・黒田「ああ。」
対話1「要するにその、農業、用水兼作水たい。そいけん、作物ば作るったい。田んぼに水ば。」
黒田「この池は、なんと呼んでいますか?」
対話1「こいは、この池は個人のとやっけんが、何も名前はついとっもんか。ね。」
対話1「養殖すうてちゃあしたとやっけん、ここは池じゃなか。だけん。」
黒田「はい。」
黒田「次は橋にはどんな名前がついてますか?この辺ついてる橋の名前で。」
対話1「別に橋は何も名前はなか。」
対話2「ああ小さかウラダの川に、ウラダのたいごうにかけた、橋やっけんが。」
対話1「んんと、こけいっちょ架かっとさ、橋の。二つかかっとんばってんが、こいが名前わからんたいね。こいが裏が道やっけん。」
黒田「はああ。」
対話1「そいけん名前何もついとらん。こっちで作ったばっかいやっけん。」
黒田「名前はつけていないんですね?」
対話1「うん、名前は... 要するにあの、カンジン橋て何てあぎゃんなんも名前はついとらんわけたい。」
高祖「ああ。」
対話1「こん、由来て。」
対話2「さあ、そがんとは。」
対話1「ちょっと分からん。」
高祖「家に屋号は、同じ姓の名前で、その区別するために屋号は何かついてましたか?」
対話1「んにゃ、そがんとはなか、ね。庄屋じゃなかけん、屋号でん何でんなか。」
対話1(笑)
黒田「大木や岩についた名前は何か?この辺で大きい岩とか石とかあって、それに何か名前をつけているとか、何かいわくつきの。」
対話1「ここにきつうぎにゃ、問題はここたい、ここにあの巨石パークのあったい。」
高祖「はは。」
黒田「こっちは。」
対話1「関係なかけんない。こっちにゃ別にそがんとはなかもんね。」
対話2「今言った、その、このあぎゃんとに、力石て言うとの。」
高祖・黒田「ああ。」
黒田「こっちのほうにですね。」
黒田「旧道や、峠についている名前とかは?こっち今、なくなっているんですか?」
高祖「こう、小城のほうに。」
対話2「オフドウサンにきや?オフドウサンミチたい。」
対話1「ハクシュウザン。」
対話1「ウラダん道からこう来て、そいけん、ウラダん道んつきあたりにきな、ふとか山のみゆったい。ありゃあ。」
対話2「高取山や?」
対話1「ハクシュウザンて言うとやろ、こりゃあ。」
対話2「ハクシュウザンて、ありゃあ、横側ん道知らん道たい。」
対話1「はあはあ、あっちね。」
対話2「高取山つうたら、こいば登ったとこたい。」
対話1「高取山つうとはついとらんごた。」
黒田「ああ、それじゃそれも記入してください。」
対話1「こっちにもあったい。ね。」
もう一枚の地図を広げる。
対話1「ウラダん川のこう、延長したとこやんもいね。そいけん、ここにきあんもいね。ここんにき山の、かなりふとか山の。こいかね?」
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黒田「昔になんかこういう、思い出と書いてあるんですけど、事件みたいなの有りましたか?」
対話1「こっちは元は小城郡やったとの。」
黒田「小城郡から、佐賀郡に。」
対話2「小城郡から佐賀郡に編入したとの。」
対話1「富士町から大和町に分散したとの。」
黒田「水の量はどうですか?昔と今と比べて。」
対話1「そりゃあ、変わらん。山水やっけんが。」
黒田「水の争いとかはありましたかね?」
対話2「ないない。」
対話1「井出の一本ばかいやっけん。」
黒田「水を分ける上で、何かルールは?決まりごととかは?」
対話1「そりゃあ、上から順にずーっとかかっていくけんね。」
対話2「上から下さんかかっていくけんがね。」
黒田「旱魃の思い出は何かありますか?その年とかは?」
対話2「こっちはなかばってんが、雨乞いしたことないよ。」
黒田「雨乞いですか。何年前ぐらいに?」
対話2「20年、25年ぐらい前。」
黒田「どういう雨乞いをするんですか?どういう風に?」
対話2「お宮で神主さん呼んで。」
対話1「普通のあいと変わらんたい、雨乞いと。」
対話2「神社祭り
黒田「その神主さんはどこの?」
対話1「タカキさんかの。」
対話2「うん、そのころはオオシマのタカキさん。八幡神社。」
対話1「タカキ八幡さん。」
黒田「用水路の中の生き物。」
対話2「今は、ヤマメに、ハヤ。」
対話1「川上川にきなっきんにゃ、イラとかクイとか。」
黒田「それから、今はもう少なくなったと言うのには何かありますか?今は、ヤマメが少なくなったとか。」
対話2「そりゃあ、イラが少のうなった。」
黒田「イラ減少と。」
対話2「昔はすくうて帰りよったもん。今は捕まえられんもん。」
対話1「今はおらんないばね。」
対話1・2(笑)
黒田「台風予防の。」
高祖「何か神事が何かありましたかね?」
対話1「関係なしやんもんね。ここんにきにゃ、台風来たてやて言うぐらいやんもんね。」
高祖・対話1(笑)
対話1「谷んなかやっけんね。」
黒田「麦を作っている田と、作ろうと思っても作れない田と言うのはありますか?」
対話1「ここんにきにゃあ、少なかろうね。」
対話2「元は作いよったろうね。」
黒田「元は作っていたんですか。」
対話2「うん、元はつくいよった。」
対話2「作られんとはフカダつうて、その下んほうが作られんやった。他んとこは作れた。」
対話1「ふうん、つくれたたいね。」
黒田「どの辺で?」
対話2「そいは、マエダたい。マエダにムカイダ。」
黒田「今は米だけ作って、閑期は休んで何も作っていないんですね?」
対話1・2「レタスとか、ナスとか。」
対話2「野菜。」
対話1「こん上はつくいよらんじゃなか?」
対話2「んにゃあ、つくいよっよ。」
対話1「ほんなこてや。」
黒田「この村でこの辺で収穫がいっぱいとれる地方地域は?」
対話2「そりゃあ、米やろが。」
対話1「うん、米が一番さ、どうしたっちゃ。」
黒田「ああ、一番取れる田んぼは?」
対話1「何俵ばかいとれるんねって。」
黒田「いいときと、悪いときと。」
対話2「いいときは、反当り10俵といわんばっかい。」
黒田「10俵と。悪いときは?」
対話2「悪いときは、4,5俵ぐらい。」
黒田「ああ、4,5俵になるんですか。麦を作っているときは?一反あたりどれくらい?」
対話2「麦は、8俵ぐらいは。」
黒田「はあ、8俵。そばは作っていましたか?」
対話1「んにゃあ、そばはなか。」
黒田「何斗蒔き、何升蒔きというのはありましたか?」
高祖「あの、直播とか何とかはありましたか?」
対話1「直播、直播はせんばってんが、育苗箱には...」
対話1「何斗蒔きはなか。何升蒔きやろ。だけん、升蒔きやろ。」
黒田「直播ですか?」
対話1「いや、直播じゃなか。育苗箱に蒔くとやんもん。こん箱んなかの。」
黒田「昔の肥料にはどんなのを使っていましたか?牛糞とかですか。」
対話2「牛糞とか、そいから、やっぱ金肥やろね。化成肥料とか。」
対話1「昔はタンポやったとの。」
対話2「あ?」
対話1「タンポはしっとっか?お前たちはいつでんしよっやろが。ションベンとかウンコとか。」
黒田「ああ。稲の病気にどんなものが?」
対話1「そりゃあ、イモチ、イモンガレ。」
高祖「それはどう駆除してましたか?」
対話1「昔は石油でしよったね。」
高祖「ああ。」
黒田「石油。」
対話2「石油て言うか、廃油。廃油で、足で水ばパッパッパッパってかけて。」
対話1「あんたんとこもそうしよった?いや、始めしよった?」
対話1「さあ、はよ行かんば。」
黒田「共同作業はありましたか?」
対話1「昔は共同作業ばしよったろうもん。」
対話2「んにゃあ、こっちはしよらんやった。」
黒田「お手伝いの早乙女は来ましたか?」
対話1「田植えさんば雇いよった?」
対話2「田植えさんは雇いよった。早乙女じゃなか田植えさんば。そいでまた行よった。」
黒田「さなぶりはありましたか?」
対話2「あったよ。さなぶりとか、おりまちとか。」
黒田「どういうことを?酒飲んだりとか?」
対話1「うん、酒飲んで。」
黒田「このあたりに昔の川てないですか?」
対話1「うん、なかろうね。」
黒田「田植え歌は」
対話2「なし。」
対話1「あんもんかい。」
黒田「飼っていたのは牛ですか?」
対話1・2「牛。」
黒田「えさはどこから運んできましたか?」
対話2「えさ?」
対話1「えさ。飼料。」
対話2「飼料はここんにき、田んぼのあぜの草ば。」
対話1「ふすまば買いよったもんね。」
黒田「ふすま?」
対話2「知らんやろ?ふすまは米のかすさ。」
高祖「牛を操作する上で、右に行かせたり、左に行かせたるするときの掛け声とか何かありますか。」
対話2「うん、するよ。右に行かすっときは、こいば振っさ。左さ行くときはトウトウていわすと。」
黒田「左はトウトウ。右は手綱を引く。」
黒田「後半分ぐらいですね。」
対話1「半分じゃあんもんな。日のくるっばい、さっさ行かんば。」
(一同笑)
黒田「手綱は何本?」
対話2「牛は一本。」
黒田「牛をおとなしくさせるためには?雄牛とか。」
対話2「雄牛は、ハナグリば、しゅろの皮をはいで、そいでのうで、またこけ通してくびいよったったい。」
対話1「ハナグリつうてね、杉のこう曲げたとをがん、牛は通しとんもんね。それに今度は、コバナシっつうてさ、これくらいばっかい しゅろの皮ば、のうだとばまた穴に通して、そいでくびって、たずなで引くん。そいぎにゃチクッてすっけん、しっかいくびって、痛かごとして。」
高祖「あの、牛は洗いましたかね?」
対話1「洗うよ。」
高祖「洗いますか。どの辺で洗いましたか?」
対話1「やっぱ川んなか連れて行くっさ。浅か川さん。昔は、馬洗いば、牛洗いばしたとたい。ね。」
対話1「ここで言うぎとは、そいけんここんにきじゃろもん、この、なんちゅうか、田んなかさん前んにきじゃろもん。あそこしかなかろうもん。あの、昔、墓さん行きよった。」
対話2「リョウジ、リョウジ、リョウジにゃあ。」
対話1「こいが、田んなかやっけん。こいが停留所やっけん。んん、ここんとこ、ここんにきじゃなか?」
対話2「このへんがミヤウチか。そいけん大川さいたってさ。こっちになってか。」
対話1「ここんにきたい。」
高祖「草を、その、草を刈ったりする山はありましたか?」
対話2「昔はあったよ。むかしは、おいは行ったことなかばってん、オガワウチの上さん山切りさ、草きりさ行きよったて。」
対話1「んと、オゴウチの、ここの山さん、この上の山さん木や切りに行きよったって。」
対話2「この山やんもんね。」
黒田「薪はどこで入手してましたかね。」
対話1・2「薪ゃあもう、ここんにきの山で。山ばっかいやっけん。」
対話1「近所の山でよかくさい。」
黒田「ああ。入会山はありましたか?」
高祖・黒田「共有している。」
対話2「共有山は裏山のあっけんが、そういう林のあっさ。部落有林のあっさ。」
高祖「どの辺にありましたか?どの辺にありますか?」
対話2「部落有林は、...江口さんはどこかいな。」
対話1「ここがあんたんにきなろ?こいが、えーと、江口さんがこいやろ?こいか、こいが江口さんか。」
対話2「こいが家ん前の道やろ?」
対話1「ふんふん、こいが江口さんやろ?こいから、こう登ったとこや。ここんにき。ここんにきいっちょと、そいから、こう登って。共有...」
対話1「もう一ヶ所あいやろ。江口さんがこいやっけん、江口さんがた裏やろ?そいと、こいからこう登ったとこと。こいからこう、ね。」
対話1「そこが草木じゃ。そこさん行けばわかっとばってんが。」
黒田「そこで、どんな作業を?」
対話1「もう今のあんまいせん。昔は、あの、杉の下刈りて言うてね、木の大きうなってね。」
黒田「ああ、はいはいはい。」
対話1「木の大きうなる様に下刈りね。もう木の大きうなったけんが、せん。」
黒田「なるほど。あ、ずっと植えてたということですか?その前は。植林していたて。」
対話1「うん、植林はしてあるわけ。部落でね。」
高祖「木の切り出しはしていましたか?何か?」
対話1「んにゃ、今は殆どしとらんね。売れんもんでさ。売れんもんじゃ...」
対話1「むかしはしよったかな。」
対話2「国有林から松ば出しよったばってんな。松とか杉とかば元は出しよった。」
高祖「ああ。」
対話2「今はせん。」
黒田「昔の話?」
対話2「どう、どう、ぞう...」
対話1「ドウビキつうてな、牛で引っ張り出して。」
高祖「ドウビキ。」
対話1「ロウビキても書いてあいやっか、そけ、はは。」
対話2「ドウビキじゃなか、ゾウビキらしかもん。」
対話1「ああ、ひっぱたくけんやろ?」
黒田「ああ、川流しとかは?川を使って。」
対話2「そはなか。」
対話1「炭焼き。炭焼きしよった?だいじゃい?」
対話2「おいが親父は、炭焼きしよった。」
対話1「そいじゃ、わからんたいね。
黒田「他に何か、どれくらい焼いていたとかは?」
対話1「そいがわからん。こいは一人でしよったとやっけんね。共同でしたとやなかけん。」
黒田「自家製作。」
黒田「かまどを作ってはいけない日はありましたか?」
対話1「かまどを作ってはいけない日なんてはなかろ?」
対話2「なかろ。いつでもよかったちゃろ。」
黒田「山を焼いたりすることはありました?」
対話1「そりゃなか。そいばしよんないば、死ぬやろ。」
対話2「昔は野焼きあったよ。」
高祖・黒田「ああ、あった。」
対話2「あって、そいで焼いて杉ば植えよった。」
黒田「何年間荒らしましたか?」
対話1「何年間したかて。一回。」
対話2「なんの、一回きりやがな。」
対話1「一回するぎにゃ、後はもう木の太うなるまで。」
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