分間図と秋月街道
県立甘木歴史資料館に保管されている7枚の分間図がある。
1野町村分間図(全11のうち、10,11)
2依井村分間図(全4のうち2〜4)
3依井村分間図(全)
4弥永村分間図(全)
5弥永村分間図(全)
6山隈村分間図(全)
7高田村分間図(全)
いずれもそれぞれの村の区長に伝わったものである。おおむね記載方式は統一されていて、7,5センチメートルの方眼が全面に朱で書かれている。2,5寸つまり25分である。分間図であるから、分が間になる。10分=1寸、10寸=1尺、6尺=1間つまり1間=600分で、600分1である。方眼のます目は2,5寸(25分)×600=25間(150尺)となる。45メ−トルである。家は家の形で書かれている。凡例がないが黄色は畑で、緑は山林、藪のようである。
作成時期についてはいずれも記載はないが、4の場合、小鷹山城を書いた紙の糊代に小さな字で、「コタカ城跡ハ文政十三□□三月 土井木工允内□也」という注記が読め、几帳面なその字は本文と同筆のようである。土井は国立公文書館所蔵『古戦古城図』や『上秋月村分間図』を製作、測量に当たった土井正就であろう(『温故』19,平成5)。かれが古城図を作成した時の成果を反映させたという旨の記述と考えられる。いっぽうこの図には「官林」ということばもみえるから、明治維新以降のものかと考えられる。3や5にきわめて似た分間図が秋月地区にあり、それには明治八年の年紀があるというから(篠原浩之氏より)、地租改正を契機として作成された可能性がある。ただし地租改正に当たってこのような高精度の絵図が簡単にできるはずはない。土井とともに地図の作製に当たった大蔵種周の子孫の家には「土井正就氏製図法聞書」などがあり、幕末からひろく分間図の作成が村々において進められていたことが推測できる。上記のうち、複数枚残るものなどは、そうした経緯を示すのではないか。
さて秋月街道が通過する村を中心に順次その特色を見ていこう。まず野町は街道に面して両側に家が建つ。
カネの手まがりが二カ所ある。方眼で図ると
センチだから、現地は6メートルほどのクランクがあった。
関所は伝説で、跡地に新右ヱ門の宅地がたったとされており、西から宿場に入ってきた場所となる。三方が藪になっていた。
禅門橋。禅門は乞食の意味であろうか。宿場で栄えたから、多数の通行者の施しで生きていくことができた。彦山参詣者などはとくに喜捨をしたかもしれない。その意味だとすれば、街道の反映を示すことばだ。今も小字名に残っている。
弥永一里塚
昭和16年8月1日史跡指定
昭和38年4月24日史跡指定解除
現在は史跡の標柱のみがある。昭和一八年に刊行された『福岡県史蹟名勝天然紀年物調査報告書』一四輯・天然紀年物之部(福岡県刊)に「弥永壱里塚松」として記述・写真がある。「伝ふる所によれば往昔壱里塚上に移植せられたるものゝ由なるも今は塚らしき面影は少しもなく」とあるから、松の根に覆い尽くされていたらしい。
引用された県社大已貴神社社寶の繪馬には一対の塚とそれぞれに二本、合計四本の松が描かれている。報告に「東西二基の塚ありたるがいつの世にか一方は壊滅してその西側のみとなり、更に明治十四五年の頃この塚上の二樹のうち北側のもの取除かれ」とあって、元来四本あったものが一本になっていた。
依井村:小字の数90
から川 油田 カミ田 すいかい 馬渡り 下井手 下ケンタ 井手 ケンタ エノキマチ 金町・キンマチ 三十三 ヲフコカエリ 行井手 ナカタマチ ヒエマチ カシワラ 野田 平田 マツリ田 八ノ坪 九ノ坪 宮の前 宮の脇 十五 ヤシキダ 松明 トヤキ コノミヤ ミスミタ ヒカゲ 縄手の上 マトバ 奈良屋まえ 奈良前 ハシカミタ 塚本屋敷 弥勒寺 豆田 稲葉 イナハ堂 クラソノ 俵木・タハラキ 寺後 油ヤシキ 垣添 西口 ミヤサキ ヘフ 柳井町 ヘイチマチ ヒエ町 カシマル・梶丸 チシャノキ シマメグリ 八ガ坪 七ガ坪 ツミタ セトクチ 長田町 中ノ名 せぶ・ゼフ アサカケ シモハル モチコ カサダ 大坪 大仏丁 あらまき 石原町 ミフカ シロウリ 大池 小池 嶋畑 タキリ下 堀田 木ノ下 ナベヤクラゾノ 草場 下ノ原 水洗 隈ノ下 隈ヶ山 下隈添 ヨツエタ 上隈添 苗代田 梶久 サヤノモト 中門口 モモ田
参考:明治15年小字名調(依井)小字数51、*はルビが振られているもの、ただしカネマチ/金町*はキンマチが正しい。
ヤツガツボ/八ヶ坪* ナナガツボ/七ヶ坪 ヒラタ/平田 ノタ ユキイデ/行井手*
フチダカ/淵高 ジュウゴ/十五 ハシガシタ/橋ヶ下 ツミ夕 アサカケ/朝カケ キノモト/木ノ本 ウト カジキウ/梶久* ミズアライ/水洗 オオイケ/大池
コイケ/小イケ シラウリ/白瓜 タキガシタ/タキガ下 シモハル・下原 タイマツ・松明
ツカモト/塚本 ハシモト/橋本 イデヤシキ/井手屋敷 タワラギ/俵木 モチダ/持田
ベフ・部府 チシヤノキ カシマル/カシ丸 ヲフコカエリ/ヲフコカヱリ カネマチ/金町*
ケンダ/見田* イシハラマチ/石原町 オオボトケチョウ/大佛丁 ニシグチ/西口
ゴゴウダ/五合田 ナカガワラ/中川原 シモガワラ/下川原 クマガサン/熊ヶ山
クラソノヤシキ/倉園屋敷 ミヤザキ/宮崎 イデ/井手 マワタリ/馬渡*
カラガワ/カラ川 モヽタ・百田 フルカマト/古竈門* カキノキダ/柿ノ木田
ナラザキ/奈良崎 ナラヤシキ マトハ タチバナギ/立花木 コレミヤ/此宮
弥永村 小字数69+19
せんとう ふくで・仏供田 水田・小田 池田 中や谷 うづの宮 カウタリ のま口 ごふご田 土穴 原の下 寺ノ前 清月寺 寺宮 原井 草の下 石原町
流田 四ツ枝 八ノ坪 もどり 明楽寺 口ノ坪 川原田 ならの前 みすみ田 薬師の本 柳の内 なら崎 乙井手 桑木田 とひの本 なべた 井手口 うわら 岸の下 谷口 いば屋敷 ひふり 十五才 ふち高 ひかけ あまかはた 大藪 古川 笹藪 六百田 松尾 なのり 元宗田 きやう田 のぎ松 堤田 辻だう町 ひがんだ なか田 宮日田 あんの下 こその こその天神上 だらが坂 大神堤 新堤 宮のうしろ かげ 泉田 かつら木 いっちり 宮の上
B原の前 もとさと さやのもと 四ノ坪 四つ原 とうの下 おべた ひふけ しまだ ふちた 石井手 めくら落し なしの下 なのふり せとう町 なかさこ 北その 井ノ口堀 くえ岸
参考:明治15年小字名調(弥永ヤナガ)小字数32
イバ屋敷 フルデラ/古寺 イシハラマチ/石原町 アマガハタ/天ヶ畑*
ヒカケ ジュウゴサイ/十五才 ロッピャクダ/六百田 サヽヤフ マツカワラ/松カワラ
クワノキダ/桑ノ木田 ツチアナ/土穴 イケダ/池田 センドヲ ナラザキ
トウノシタ/塔ノ下 イデグチ/井手口 タニグチ/谷口 ミヤノウエ/宮ノ上
オンガヤシキ/大神屋敷* ユノグチ/湯ノ口 ナカザト/中里 ナノリ ミョウラクジ/明樂寺
モトザト/元里 ヒラキヤマ/開山 スギタニ/杉谷 ナシノキシロ/梨ノ木城*
サクラガワ/櫻川 オンガサン/大神山* ノキマツ/ノキ松 ウツノミヤ/ウツノ宮
セトマチ/
山隈村 小字数21
丸山 土取 道添 八反牟田 大刀洗 西三丁牟田 どうぶけ やしき前 落橋 でんち 東三丁牟田 川中上 □くい 山伏塚 桜むた畠 くひり 五反畠 溝田 坂はり(坂ほり) 坂の木 なかの塘
参考:明治15年小字名調(ヤマグマ山隈 小字数20)
ナガムタ/長牟田 シモヤマ/下山* シロヤマ/城山* ヂンヤマ/陳山* ツカモト/塚本
タチベ/田地邊* サンチョウムタ/三丁牟田 スミガモト/住ヶ本 キロ アカハケ/赤ハケ
サクラムタ/櫻牟田 サカボリ/坂堀 ニシサンチョウムタ/西三丁牟田 タチアライ/太刀洗
イムタ/井牟田 アサカケ/淺カケ ウラヤマ/浦山 マエダ/前田 マルヤマ/丸山
ツチトリ/土トリ
高田村 小字数36
中もう 土取 下のまた 九の坪 高町 すなどり しげとふ 牛町 一町田 井尻 くほ田 おしき とうめき 栗崎 上の畠 経塚 経塚の下 下原 新かい尻 かしわ畠 いむた 原の田 西しゅうこ 大堤 平まい 日岸田 上新貝(上しんがい) 下原田 栗林 長畠 佛徳 下堤 六反田 きしの田 八反田 三まいでん
ウマダ/馬田 | ウシギ(牛木)
シロカワラ/白川原 テンジンハタケ/天神畠 テンジンタ/天神田 ヒラタ/平田 ソメダ/染田 カラ川 シモコウラ/下川原 ハネキ オンガタ*/大神田
サンワ/三輪 | ノマチ(野町)
イムタ/井牟田 ジゾウシタ・地藏下* オオムタ/大牟田 ムラカミ/村上
ムカヘノ/向野* コスギ/小杉 ハルタ/原田* サウヅマチ/
カシラマチ/頭町* クボタ/久保田 イッポンギ/一本木 カハラケデン・土器田
フカマチ/深町 トクホウシ/徳法師 ナガワリ/長割 タコヘ・高土 シモハル・下原
センモンバシ/禪門橋 コヅカ/小塚 オオマル/大丸 クジタ/□田* ツカモト/塚本
ウト/宇土 カキゾエ/柿添 シンマチ/