歩いて考える歴史レポート〈佐賀県西松浦群西有田町立部〉

1AG98051  　加藤恵

1AG98023　岩永圭子

・お話してくださった方々

立部勇さん：昭和5年生まれ　

野中昭夫さん：昭和7年生まれ

岩尾賢一さん：昭和7年生まれ

立部等さん：昭和12年生まれ　　　　　　調査日　7月10日　土曜日

 

・しこ名

ミャアブチ(舞渕)、マイトコロ(舞所)、ナガツカ(長塚)、ジョウジンボウ、アンノモト(庵ノ元)、ミズアライ(水洗)、テンジンダ(天神田)、ヘントウ(辺頭)、トントンミチ

 

小字　二本松　　ミャアブチ・・・水害の時に水が堤防に当たり回る部分。

マイトコロ・・・田畑

アンノモト・・・寺跡

ナガツカ・・・田畑

ジョウジンボウ・・・田畑

　　　立部　　　ミズアライ・・・水害の時流されてしまう田畑

　　　三本松　　テンジンダ・・・神が奉ってあった場所

　　　極楽辻　　トントンミチ・・・道。勾配が激しかった。

　　　桶杓川　　ヘントウ・・・溜池

 

〈水利について〉

桑々田溜池・・・立部、山本、桑木原、大木の村で共有。争いはなかった。各部落で割り当ててこの堤をつくった。

　しかし、立部には高いところにも田があったため、小さな溜池をたくさん作っ

た。他村は1つに頼っていた。立部の溜池には必ず“フーツー役”と呼ばれる管理者が居る。フーツー役は1年ごとに交代で受け持つ。大雨が降った時などは、フーツー役が責任もって溜池に栓を打つ。フーツー役は厳しい役目であるらしい。

 

〈干魃について〉

　干魃の際はある程度水が溜まってから、流していたらしい。現在は個人でポンプを持つため、有田川から水を引ける。昔は高い所にある田はあきらめるしかなかった。田植えのすぐあとに雨乞いをする風習があったらしいが、今では夏祭りという形で受け継がれている。

 

〈田について〉

　小字二本松は有田川から水を引くため全く心配はなかったが、壁岩など高いところにある田は水が十分になく、3年に1回は不作だったそうだ。今はダムからポンプで引き上げているため心配はない。

　肥料に使われていたのは、主に堆肥で、牛や馬をつれて草をとってきて肥料として使っていたらしい。

　昭和初期までは、5、6俵ぐらいしかとれていなかったが、大部分が小作料にとられていた。6俵中4俵ほどとられていたため、小作人は自分たちで食べる米はなく、麦をまいて生活していた。農地改革まではきつい生活で米を売る余裕はなかったそうだ。戦時中も小作料は強制で、男は兵役を強いられ年寄りと女は農業をしていた。戦後まで牛と馬を使っていた。戦後になって化学肥料を使うようになったため米もとれるようになったらしい。終戦後10年くらいは農薬は使用せず、手作業で虫を落としていた。今は有機栽培にもどる傾向もあるらしい。

 

〈ガス、電気について〉

　昭和初期頃電気は来ていたが、一軒に1つか2つしかなかったらしい。ガスは昭和30年ころ。テレビが普及され始めたのが、東京オリンピックのころらしい。

 

〈共有林について〉

　昔から各部落の財産として共有林はあったらしい。松などは売られていた。共有林から薪をとってきて、風呂焚きなどに使っていた。冬のあいだは取りに行かず、夏のあいだにとった物をためておいて使ったらしい。燃やしたあとの灰は肥料として使っていた。今はビニールが入るため使えない。とにかく、百姓は使えるものは何でも使っており自給自足の生活だったらしい。

 

〈米について〉

　家庭で食べる米はハンミャアと呼んでいたらしい。庶民はカンカンに入れたり酒屋から樽を買って保存していたが、金持ちは、家中にはネズミが住み着きやすかったため特にネズミ対策はしていなかったらしい。終戦後は、麦と米の半々の食事で、たご汁、そうめんなどを代わりに食べることもあったらしい。40年代になって米のみの食事になった。

 

〈牛・馬について〉

　百姓の家には牛と馬は必ずいた。繁殖させて1年に1回は売りに出してお金を得ていたらしい。

 

〈道について〉

　2mほどしかない道をシャリキという台車を牛・馬にひかせて有田まで肥料を買いに行ったらしい。山の中の村だったため、魚は漁商が自転車で売りにくるときしか、食べる機会がなかった。秋は米の取り入れで体力を使うため、干し魚を買って保存して食べていたらしい。塩は専売から買い、戦時中は配給だった。昆布などはなかった。

 

〈若者たちについて〉

　若者たちはみんな百姓をしていた。他に仕事がなかったためだ。休めるのは正月3日と盆3日と4月の節句のみだけだった。男は青年館という今の公民館のような場所に集まり、寝泊まりしていたらしい。若者たちの一番お楽しみは夏祭りで、異性と接触できた。一緒にいくときは女性を家まで送り届けるのが礼儀だった。ほかの村の女性と結婚するには、その村の人に挨拶が必要だった。

 

〈村の変わり方について〉

昔は純農村だったが、今はほとんど兼業農家である。利益はほとんどなく土地があれないように守るため農業をしているらしい。後継者がなく老人が農業をし、子は就職している。西有田では、田植え祭りなどを行って、農業の心を忘れないように取り組んでいるそうだ。