唐津市北波多村行合野

【唐津市北波多村行合野】

歴史と異文化理解A　現地調査レポート

1LT97149　南　伸太郎

1LT97121　濱﨑　義英

調査日：平成9年7月6日（日）

お話を伺った方：山崎　猛夫さん（大正10年生まれ）

金丸　敏明さん（大正15年生まれ）

＜話者：山崎さん＞

＊小字の由来について

・カンネヲ……「カン」＝浸食の意　「ネ」＝はげ山　「ヲ」＝丘

→地形の露出した所、はげ山の頂上。

・エノキ谷……「榎」①神聖な樹木。地蔵の傍らに植えられていた。

②湿地帯の意味。

・山口……山の入り口

・銅金谷(ドウキンダニ)……「ドウ」＝水の激しく流れる音。「キン」＝禁。水が流れないという意。

→雨が降った時は水が流れるが、晴れた時は水がない。

・前……神社、寺などの前の意。

・土元(ツチノモト)……「ツチ」＝泥の意。

→小高くなった所。

・天狗岩……天狗の鼻のように高い所。天狗の鼻のような岩。今は存在するか分からない。

・中村……村の中心地。

＊山崎さんの地名と歴史についての話

・地名は歴史を表しているので、その地の生活習慣等まで分かる。

・漢字は意味を表し、カナは音を表す。地名の漢字は当て字が多いので、カナで表記した方が正しい意味が分かりやすい。

＊北波多周辺の小字名とその歴史

・応仁の乱後…条理の制の坪→一の坪、二の坪･･･

・平安末…1004～1102年ごろ→ハタ、キク、オオスギ

・江戸頃…検地の時→新田、開など

・焼き畑跡…キリハタ、ソラス、コバ、ヒラコバ、タケコバ、イモコバ

＊その他

・カッパ…「ガワッパ」と発音。秦の滅亡後、渡来人と共に日本へ来た。

・水路…三年前に肥前町から水を引こうとしたが、水位も高く、金もかかるのでやめた。

・たいひ…「ウマヤンコエ」と発音。

＜話者：金丸さん＞

肥料：各家庭に牛馬のふんを溜める。

裏作の時に入れる。

いくらかは化学肥料。大抵は堆肥。

三反田、谷口の前付近の山は、昔は野原。（野原→夏場毎朝草を刈る→肥料）

9月に野焼きをする。

競技会を行い、堆肥作りを奨励。

祭り：8月24日　弘法大師の堂（地図位置⑦）で盆踊り。

祭祀：天神社へ波多八幡神社の神主が来られる。

春―4月の初めの日曜。敬老会を兼ねる。

夏―6月の末の日曜。盆縄を作る。

秋―8月の末の日曜。（天神社前の広場で）区の運動会。

キシダケバッソン…武田にやられた人々の末裔。

各地に塚がある。

祟りを恐れて祀る。

昔、甲城で2月初午の祭り。

水利：井田みぞ（地図位置⑧）

ためみぞ（地図位置⑨）

田：裏作はやっていない。昔は6月末、今は5月に田植えをしているので、収穫が間に合わない。野菜は田が水害で水に浸かるので作れない。専業農家は1軒。

3年前の大旱魃：水を上げ、用水で間に合わせた。

水害：川を広げる前＝すぐに氾濫し、床下浸水が起こる。

　　　　　〃　　後＝ない。

地名：ひどんかわ（地図位置②）

とびのす（地図位置③）

のべ田（地図位置④）

梅の谷（地図位置⑤）

風呂の谷（地図位置⑥）

古道：甲城へ行く道（地図位置⑩）

ため池：ツルタ（地図位置⑪付近）

○一日の行動

　バスを徳須恵で降りて、北波多中央公民館へ向かう。11時に山崎氏と会うアポイントメントを取っていたが叶わず、昼過ぎまで公民館で待つことになる。

　1時頃から山崎氏の話を聞く。その後、陣内氏に車で行合野まで送っていただく。

　車を降りた後、田で草を刈っていた金丸氏に会う。山崎氏から頂いた資料をもとに、地名の場所等の話を聞く。

　その後、バスに乗り九大へ帰る。

○感想

僕は佐賀県の山の村に行くと聞いた時、もっと田畑ばかりで、家など殆どないような所を想像していたが、実際はコンビニやガソリンスタンドなどたくさんあって、失礼だが驚いた。しかし、やはり村にいると非常に多くのお年寄りを目にした。

行合野に向かった時、金丸さんにお会いしてお話を伺った時も常々口にしていらしたが、若い人が次々に村を離れて行って、村の過疎化が進んでいるようであった。昔のことを知っている人も金丸さんと、あと一人ほどしかいらっしゃらないらしい。

最初は、良い成績をもらえればいいという気持ちで調査をしようとしていたし、田畑の私的な名称なんていうマイナーなものを調べて、何になるのだろうという気持ちもあったが、現地の人と話をしてふれあいをもってみると、そういった話に生活の様子や人々の息づかいが聞こえてくるようだった。

僕は佐賀県調査で、過疎化の問題にじかに触れてみてその重大さも解ったし、フィールドワークの楽しさ、資料を残すことの大切さを感じることができたので、とてもよい経験になったと実感している。（南）

昼過ぎまで話を聞くことができず、一時はどうなることかと思った。山崎氏は歴史研究家ということもあり北波多村のことをよく知っていらしたが、行合野のことに関してはよく覚えていらっしゃらなかった。話を聞いた北波多中央公民館から行合野まではかなりの距離があり、陣内氏に車で送って頂けたことはかなり助かった。

行合野ではソフトボールの打ち上げをしており、田で金丸氏に出会えたことは、かなりの幸運であった。親切に話してもらえたので、こちらも気軽に村のことを尋ねることができた。もう少し時間があれば、ゆっくりと地名を思い出してもらうこともできただろう。少々残念である。

世代交代が起こるたびに、昔の地名や習慣がなくなっていくのは惜しい話である。この行合野では若い人の人数が減ってきているそうで、それがもっと顕著に起こるだろうし、金丸氏もそう言っておられた。自分達が調べたことで、少しでも後に残せたら良いと思う。（濱﨑）