【唐津市下久里】 歴史と異文化理解A 現地調査レポート 1LT97098 中尾 瞳 1LT97129 深田 朝
調査日:1997年7月6日(日曜日) 話者:岩田 哲さん (昭和3年生まれ) 坂木 静男さん(昭和10年生まれ) 岩田 政敏さん(昭和6年生まれ) 下川 俊明さん(昭和25年生まれ) 岩田 哲雄さん(昭和31年生まれ) 岩田 広紀さん(昭和30年生まれ) 古賀 公民館長さん(推定50歳前後)
―1日の行動記録― その日は朝から嫌な天気だった。 8時10分 2人一緒に六本松に到着。その日の昼食を買う。 8時15分 集合時間。生徒もほぼ集まっているようだ。しかし先生の姿は見えない。 8時25分 先生がやっと来られる。出席カード受け取り、バスに乗車。 8時30分頃 出発 9時35分 10分間トイレ休憩。ここで、アシスタントのお兄さんが1グループを降し忘れていたことが発覚。この先大丈夫なのだろうか。 10時25分 バス降りる。岩田広紀さんとの待ち合わせ場所である「唐津花菖蒲園」へ。 10時32分 岩田さんが車で来られる。乗せてもらって一緒に公民館へ。 10時40分 公民館に到着。「お父さんソフトボール大会」が開催されていた。 10時45分 公民館事務所で岩田さんからいろんな資料(地図、文献etc.)のコピーをいただく。 11時00分頃 岩田さんが人を呼びに行き、事務所に2人とり残される。 11時04分 岩田さんの他、坂木さん、下川さん、岩田哲雄さん3人が来られる。いろいろな話をしてくださった。 11時30分頃 岩田哲雄さんと下川さんがソフトボールに戻って行かれた。 引き続き、岩田さんと坂木さんから話を伺う。 11時45分 岩田政敏さんが来られる。キシダケジョウについて熱弁をふるって下さった。 その後、公民館長さんが来られる。 1時14分 話が一段落する。岩田さん達はソフトボールを見に行かれた。 その間に2人とも昼食をとる。 1時40分 再び岩田さんの車に乗せてもらい、岩田哲さんの家へ。 1時55分頃 岩田哲さんの家に到着。話を伺う。 この辺はもともと海だったので、古い地名はそう残っていないとの事。 (それからソフトボールの試合は負けたという事も聞いた。) 2時25分 岩田哲さん宅を後にし、岩田さんに下久里内を車で回ってもらう。 (自宅も拝見。可愛いウサギがいた。) 車内で色々説明してもらいながら双水古墳へ。 2時40分 双水古墳に到着。他のグループのメンバーが休憩していた。 そこで2人とも傘を公民館に置き忘れてきた事に気付く。 とりあえず古墳に登り、猛烈な強風を身をもって体験する。 3時05分 岩田さんにお願いして再び公民館へ。 閉館時間ギリギリで傘を回収。 3時10分 花菖蒲園に到着。岩田さんにお礼を渡し、そこで別れる。 最後の最後までいい人だった。 3時15分 すぐ近くの店でアイスクリームを買って食べる。 3時25分 バス待ち合わせ場所へ。 強風にあおられながら、道路脇に佇んでいること20分。 3時45分 バス到着。置いて行かれずに済んだと心底ホッとする。 5時45分 学校到着。ちなみに、その間しっかり寝ていたため記憶はなし。
○地名、その他 <下久里>
※釘山、徳武、沼ノ上のイシガサキは同一のもの。
<下久里周辺(上久里、中原)>
○村の水利 *使用している用水の名 ・ムタミゾ ・クツワイデ(井手) ※現在は松浦川からポンプで水を引いている。 *用水源 ため池 ※4つのうち1つは現在植林地(共有)になっている。 *共有している他の村 下流の村々(上久里、中原等) ※下久里内にある4つのため池が水源となり、下久里で使った残りが上久里、中原等に流される。 *昔の配水の慣行、約束事 ・水を全部使ってしまってはいけない。(暗黙の了解) ・堰を管理する人が決まっていて、その人の責任で水を流していた。 ※土管で栓をしていた。(水門の代わり) *水争いの有無 ・小規模のものが数多くあった。 ※飲み水は各自井戸があるので、農業用水に関してのみ。 ※3年前の旱魃の際は被害なし。40年前なら争い事があっただろう。
◇海の中の下久里!!◇ 久里、双水、中原あたりは、昔々は島(デルタ地帯)であった。当時松浦川の支流(?)が山すその方にまで回り込んでいたものを、江戸時代頃、人工的に手を加えて、今の松浦川の流れのみになったらしい。ただし、川というよりもむしろ海と言った方がいいだろう。当然、水も海水なのである。そのため、2メートルほど下には塩を含んだ土があり、圃場整備当時には、土手(?)は塩田のように塩をふいて真っ白になり、2〜3年間草も生えなかったらしい。田んぼでも同様で、苗を植えても数時間後には真っ黒になってしまったり、生育ももちろん悪かったそうである。 塩害以外にも重要な問題があった。土地のほとんどが沼地か山地であり、田んぼ(タンナカ)を作ること自体が難しく、作っても湿田にしかならなかったのである。比較的、岩盤の硬かった大牟田、中牟田でもやはり湿田だった。 またシコナ名イシガサキでは、その名の通り岩がゴロゴロしていて、これもまた良い田にはなり得なかったようである。ちなみにイシガサキは、石ヶ崎遺跡等に平然と名前が残されているのだが、シコナとして採集してよかったのだろうか。シコナが先にあったと考えておくことにする。 前述の通り、下久里の人々は決して良い条件とは言えないこの土地で、ため池から水を引き、松浦川の水害を懸念しつつタンナカを作り、地道に努力されてきたのである。(拍手!)
◇水の表情、裏表◇ 下久里を含む地域は水が多い。それは水の恵みを豊富に受けることと、水の恐ろしさを心底まで感じることの両方を意味している。 ◦水害について 地形において下久里の方が上久里よりもわずかに地面が高い。そのため、下久里が松浦川の洪水を防ぐ役を果たしていた。上久里と下久里の境にあるシマンデという堤防(?)がどうやらそれらしい。 ◦ため池(水源)について 現在は松浦川にとって代わられたため池×4。しかしそのうち3つは今も健在で、新しい唐津市のカラー地図にも青色で鮮明に示してある。ところが、うち1つ(小字名高尾のあたり)は、水がなくなったため、村の共有地として植林地へと変貌している。
◇イワシを田んぼに…◇ 圃場整備前の米の取れ方と、後の取れ方の違いは結構なものがある。前者では60 kg×5俵の300 kg程度だったのに対して、後者では 60s×8俵強の480〜500 kgも取れるようになったそうである。理由としては整備自体もあるが、稲の品質改良、農薬、化学肥料、また植え方等に負うところも大きい。 化学肥料のなかった戦前にはタイヒ(=苅敷)を田に入れていた。苅敷の内容は草などをためておいて、しばらく経ったものを使うらしい。内容は個人所有の山(それぞれが持っていた)に朝早く入り、そこで刈り取ってきた草や麦ワラ、稲ワラ、ダイズダマ、イワシの腐ったもの等が挙げられる。ここでイワシが出てくるあたりがさすが海の近くだという実感を抱かせる。 「本当はタイヒの方がいいと分かってるんだけどねぇ。化学肥料使っている。(特に若い人は)きつい仕事をしたがらないし。」とおっしゃっておられた。確かに毎朝5時から7時の間山で草取りというのはきついなぁ。
◇神社については…◇ 下久里内にあったのは 愛宕(アタゴ)神社:火の神様を祀っている。ちなみに姪浜にある愛宕神社と同じ。 天神様:天園に2つ。今はもうなくなっている。 それぞれの神社の周辺には、その神社の所有地があった。 現在は2つの天神様が無くなっているので、それぞれの所有地も同時に消滅している。 愛宕神社は、現在所有地を持っていそうな雰囲気ではなかった。 祭りは行われておらず、家の神、近所で祀る神も特に無いそうだ。岸岳末孫の石碑を除いては。
◇岸岳城(キシダケジョウ)の恐怖 〜村の人達から聞いた、ウソのようなホントの話〜◇ <あらすじ> 岸岳城の城主、波多三河守には大変美人の奥方がいた。その評判を聞いた豊臣秀吉は、その権力にものを言わせ、波多三河守に妻を差し出せと要求する。しかし波多三河守はその要求を断った。怒った豊臣秀吉は岸岳城を水攻めにする。やがて岸岳城は陥落、かろうじて生き延びた家臣達たちは、唐津各地へと逃げ落ちていったのであった。 しかし落ちのびた侍達の中でも、追っ手によって殺されたものは多数いる。その侍達をまつるため、各地に小さな石碑が多数建てられた。それは、家の座敷内だったり、屋外だったりと様々である。しかし理不尽な理由で殺されていった侍達の恨みは、これだけでは収まらなかったのであった…。
怪奇現象 その1. 石碑に罰当たりな事をしたAさん。彼はその3年後、急にこの世を去っている。 怪奇現象 その2. 石碑に触ってしまったBさん。その後原因不明の病にかかり、どこの病院へ行っても、その病が何なのか分からずじまい。とうとう神社にお参りしたところ、その石碑を供養しなさいと言われる。その通りにすると病はたちまちにして消えてしまった。 怪奇現象 その3. 多数ある石碑の内の1つの周辺で、奇妙な現象が起きている。その石碑の側では、元々立っている木とは全然別の種類の木がいつも生えてくるのである。同じ種類の木が生えてきた事は1度もない。今現在は、クスノキが生えているのだそうだ。
祟ってばかりのように思える岸岳末孫(落ちのびた侍達のこと)の石碑だが、ちゃんと御利益はある。例えば七色の菓子を供えて詣でると、夜泣きの子に効果があるそうだ。 普通に供養する時は水をかける。これは岸岳城が水攻めにされた事に由来する。
◎この岸岳城にまつわる諸々の怪奇現象は本当のようで、話を伺った坂木さん、岩田政敏さんも声を揃えて「この石碑には絶対触れない方が良い」とおっしゃっていた。 |