【多久市南多久町庄・中小路・西ノ谷】 農村山村を歩いて考える 現地調査レポート 1LT94008 荒木正帆 1LT94060 久保田薫 1LT94063 熊谷浩二 <始めに> 今回の調査において、地元の方々が現在も小字の名のままで呼んでおり、そのため小字の地図の方がよく分かると言われたので、地図は小字を使用。 地図no.1 しこ名(地名と井堰名) 地図no.2 橋と乾田・湿田 <しこ名> ・ トリゴエ……昔の殿様の通り道を越えるから。場所が特定できないので地図にはない。 <村の水利> @道灌漑 耕地整理で造られ、現在の水利のメインとなっている。中野翁(中野熊太郎)功労記念碑(大正11年8月)がある。 4部落運営となっている。 A今出川 天山から流れてくる川。圃場整備の貯水池でポンプ台によって上の整備田へ汲み上げる。クリーク。 B岸川ダム 20年前今出川に建設。 農業に不必要な分は上水道としていつもあげているが、県との取り決めで常に50万トン(ぐらい?)非常時に備えて残す。 下多久は水利組合に3地区入っている。 下流……南多久、上流……北多久 ・多久は元来水があまりなく、旱魃が多かった。ダム建設や整田への反対もあったが、今は旱魃が減った。 ・1994年は通常は年に0〜2回のダム放流回数だが、8回あった。そのかいもあって、それほど深刻な不作とはならなかった。昔だったらもっとひどかったとのこと。 ・中小路、西ノ谷では川(水)は3本あるが通常は1本しか使用しない。火災や日照り等に備えて必常用として必ず残すためである。管理は4部落と大水役・水役で行っている。 <上3ヶ所の井樋とその井樋番> ・柿木田、椋(ムク)、名称なし……3つの井堰は昔からあったが、整備時に改良された。 ・井堰番……水争い防止のために東・北・南多久それぞれの部落から地区代表を出し、当番制で番に行く。印を付けることによって見張る。 例)今日はこの○○井堰からとります。 <水役> ・水役への手当はなかった。但し地区で年間で与えていた。 例)下多久……昔は2,000円。現在は10,000円ほど。 <水争い> ・決まりは特にないが、話し合っているので大きな水争いは基本的にない。強いて言うならば、下流と上流とが互いに水を盗むこと。これは下流は保水力があまりなく、水がさあっと抜けてしまうので、土地が水をもてないからである。(椋町などがそうである)。そのため、上流地区が強く、水争いをして喧嘩をすると、下流は水をもらえなくなるので、水争いはあまりない。所詮上が強いというのがある。 ・旱魃の時には、水路がないので田んぼの中を通して「まわし水」をする。 <橋> ・九重橋……木製だったが流れてしまったので移動した。 ・高野橋……72水災(地元の人の談)の際の大水で、当時石橋だった高野橋に通じる小道が潰れたので新設した。 <その他> ・クリークの掃除……春と秋の年2回。井堰を利用している人たち、つまり、圃場整備所有関係者によって行われる。 ・田の共有はない。 ・山林の共有……30年前、馬場(以前は共有)をミカンブームで畑を作って分配し、個人運営となった。現在は20人。 ・肥料……化学肥料を使用。現在もチッ素4:リン酸6:カリ4で変わっていない。チッ素の混ざり方で違ってくるので、別々や色分けもある。(はじめから混ざっている) ・区長さんの家に明治期に書かれた土地台帳がある。今回見せて頂いた西ノ谷は「45冊中41 其壱・貳」による。 ・乾田、湿田は地図に記入。 <反省、感想> ・事前に抱いていた不安をよそに地元の人が丁寧に対応してくれたので、正直ほっとしました。しこ名が思っていたより少なく、また小字で呼んでいるために小字の地図でないと分かりにくいと言っていたのに驚きました。 今回尋ねる予定だった笹川さんが都合が悪かったために、代理の人に聞きました。この人は整備時の用地買収などに携わっていたので、当時の苦労と整備範囲などいろいろな話が聞けてよかったです。 今回の調査で感じたのですが、昔のことはやはりお年寄りしか知らないわけで、歴史的価値がどうこういうものでなく、そういうこともあったということを私たちの世代も知っておくべきではないかということです。整備前の話を聞いた後に、新しくなった高野橋に立って川を見つめたとき、行きとは違っていろいろな思い出が私の中にありました。 実際に調査に行くまではちゃんと調査ができるかどうか不安でしたが、相手の方がとても協力的だったこともあり、スムーズに調査を進めることができました。博物館や役所などにはないことを、自分の足で調べるというのは初めてでとても面白かったです。
地図no.1からしこ名を摘記 <しこ名> @レンガヤ町 Aコウチセイ(耕地整) Bリョウノハラ(両ノ原) Cサヤシキ(新屋敷) Dカラホリ Eクリゾエ Fヒガシタ(東田) <井樋名> @柿木田 Aテイジンヅカ B椋 C増 富 Dオオリキ E土井手 |