【多久市東多久町納所大字平合、大畑地区】

服部先生演習レポート

文学部国史学科3年 三村講介(1LT93150)

恒松昌司(ILT93087)

調査地点佐賀県多久市納所大字平合・大畑

 

1しこ名について

基本的には、すでに判明している字名と同じものであったらしい。ただし、一部では細かい区域にしこ名がついていたりしている。また、字名と同じといっても読み方が現代読みと違う所が何カ所かある。その理由は、もともと地元で言い習わしてきた言い方に明治期になって、無理やりに漢字をあてはめたからであろう。

下に相違点をあげる。

@27字 筆ケ崎→「くまんした(熊の下)」と「やまさき(山崎)

A256字 一ノ嬉里、ニノ嬉里→「うれり(嬉里→嬉野という表記あり)

B19字 大坪→「ううつば」

C16字 琵琶首→「びやんくび」

D14字 仏光→「ぶっぷう」

E11字 友永→「とんなが」

F65字 竹ノ下→「まつもとのひがし(松本の束)」と「よじゃく」

G71字 下里→「さがり」

     範囲外30字前田の上方→「さくらだ」

 

Dなどは後から漢字をあてたのがすぐにわかる。合六さんは最初、漢字が「仏光」であったことを知らなかったそうだ。

@の「くまんした」の由来は、隣にある40字の熊ノ辻が、その付近に熊がよく出没したことから字名がついており、その熊ノ辻のふもと(下側)にあるので「くまんした」と名付けられたそうです。

Fの「まつもとのひがし」の由来は、はっきりとしなかったが、別にこの土地の西に松本さんという家があったわけではないらしい。(最近という意味で)

他のものは単になまりによる違いだと思われる。

 

2堀、池の名前

地図に場所と名前を記入したので、ここでは名を挙げるにとどめる。

「ていじんぼい」「びやんくびのぼい」「ひょうたんぼい」「たてぽい」

「つつみ」、その他、一般的に、丸い形をした池のことを「まーぼい」という。

 

3その他

@他の土地より低地にあった田のことを「えご」と呼ぶ。

14字の仏光などにあった。

A「田ん中」の所に、畑が堤のように盛り上がった所があり、それを「もんめんでい」と呼ぶ。こではよく木綿を作っていた。「もんめん」は木綿である。堀などから土砂をかきだした後、田の周りに積み上げ、そこで耕作したらし。

B合六の付近に細長い土地がいくつも存在するが、それを「なまこだ」と呼ぶ。

形がなまこに似ているからだそうだ。

C18字八の坪の角にあたるのが、「にたんがく」。面積が二反もあるのでその名がついたそうだ。

 

4祭祀について

@合六の集落の中心部に祭られている「ていじんさん」は毎年ユ2月{註:原文まま}25日に合六の集落が中心となってお祭りしている。

(大畑では1213)

A平代の集落の裏にある山の上に、火事の神様が祭られている。

(大畑では「はってんさん」と呼ばれていた)

戦前までは、平合の集落に柱む人々だけが、山上に集まってお祭りをしていたが、戦争が始まり、男手がなくなったため、女子供や老人が山上でお祭りをするのはとても大変なため、山の下にある、20字江ノロ付近にある平合の公民館に分霊し、そこで、お祭りするようになった。

 

戦後、この納所地区に住む人たちが、自分たちの住む集落で火事があると、そこでお祭りをするようになった。

B合六の粟落にある灯籠で、「とうろうづけ」という行事が816日にある。

Cどこかであるか、聞き損ねたが、1ヵ月の間に未が3回来るときは、真ん中の未の日にお祭りをし、2回来るときには最初の方の未の日にお祭りがある。

 

5水利権などにっいて

27字筆ケ崎の角あたりにこの付近に一番大きい井樋(いび)がある。この井樋を開けると、そこに羽佐間水道の水が集中し、逆流するそうです。だから話し合いによって決められた時間以外は開けられず、開放中は下流の人たちが監視しているそうである。

この井樋から入った水は、羽佐間水道と牛津川にはさまれた地域、ほとんど全体に行き渡るそうである。この井樋の土管は人が2人入っても、大丈夫なほど広く大きいものだったそうだが、圃場整理の際、取り替えられて小さくなったそうである。

地図に平代と書いてあるあたりに井樋は「じょういび(常井樋)」と言い、時節に関係なく、いつも開いている井樋である。

また、納所地区の井樋は地図に記載した。(地図省略:入力者)

6土地に権利について

 

大畑地区の北西にある山について「たんじも(谷下)」地区と土地の所有権について争いが起こっているそうである。そもそも、その山は大畑とたんじもが国から借り受けたことになっていたが、次第にたんじものほうが土地を拡大していき、ちょうど、大畑地区に入り込んでいる状態であるらしい。所有に関する書類がきちんとそろっておらず、その点で、裁判などがおこせず、不利な状態にあるらしい。しかし、話をきくには感情的な問題なので、あまり深くは聞けなかった。

 

羽佐闘水道の水科資科(井樋開放時間の取り決め)

大字

時間数

 

区域

区域の細則

別府

時ナシ

 

猿所−樋管

羽佐間、皆木

納所

拾八時

三拾六時間

柳瀬−境

柳瀬、松瀬、合六、平代、畑田、平林、大谷、大門、裏納所

上砥川

弐拾四時

四拾八時間

田中−中高

両新持、新屋敷、宿古賀

下砥川

拾八時

三拾六時間

馬庄免−江口

舞鶴、永町、江口、正徳

粗志分

拾八時

三拾六時間

中島−高楽免

問屋、粗志分

惣領分

弐拾四時

四拾八時間

馬場−終点

馬場、辺田、唐屋敷、鍛冶屋、角田、七軒

 



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