【佐賀市高木瀬町下高木地区】

歩き、み、ふれる歴史学現地調査レポート

理科1301AG96206 前田亜有美

1AG96193■  平原桂枝

1AG96204■  古屋尚江

 

目的地 下高木

調査に協力いただいた方々

  久富峯男さん 明治44

  牛島ユキエさん 大正6

しこ名一覧

 一本杉

 梅町

 長橋

 二本杉(奥座)

 ガラン松

 コマツ

 三本杉

 サナ坪

 ヨシ堀

 四本杉(つづみ)

  東そこら

 コモ裏

 五本杉

 粉屋敷

 カンコ柳

 七ノ坪

 舘

井樋

 ボンボイイビ

 

当日の行動について

 私たちの調査地域は下高木であったが、現在そういう地名は存在していなかった。かつて下高木と呼ばれていたところは、今は高木瀬西と名前が変わっていた。そのため道行く人にたずねても下高木がどこなのか分かる人はいなかった。それもそのはずである。下高木一帯は住宅化が進んでおり、そこに住んでいる人たちのほとんどが最近越してきたひただからだ。そのためずいぶん前に改名された地名など分かるはずがなかった。地図と照らし合わせてようやく高木瀬西に着いたものの、先生から渡された地図とはずいぶん様子が違っていた。

 私たちは早速調査を開始することにした。

 まずは電話をしてから家に行こうと考えていたのだが、電話をしても「昔のことはわからない。」と言われるだけだった。結局電話などより直接訪ねたほうがよさそうだということになり、一軒一軒昔からあったような家を探して歩いた。それでも初めのうちは新興住宅地らしく門前払いを受けた。

 途方に暮れそうになったとき、訪ねた家の人がとても親切な人で、私たちが調査のことを説明すると、「自分は水田のことなど知らないが」と言って、知っていそうな人を教えて下さった。

 私たちは御礼を述べ、教えてもらった人の家に行ってみることにした。そのうちの一軒に久富さんという方がいた。私たちは高校の校長をなさっていたという久富さんのご兄弟の手助けもあって、久富さんの話をうかがえることになった。久富さんは自分で「もう年だからかなり忘れてしまった。」とおっしゃっていたが、ずいぶんいろんなことを教えて頂いた。

 久富さんの話を聞いたあと、紹介して頂いた一人暮らしをしているという牛島さんの家を訪ねた。牛島さんにも新たにしこ名を一つ教えていただいた。

 今回の反省としては、回った軒数は多かったものの、話をしてくれた家は少なく、時間の都合で結局この二軒だけしか話をうかがうことができなかったことが挙げられる。しかし、昔とずいぶん変わってしまったところを調査したにしては、多くのことを調べることが出来たのではないとか思う。

 

調査内容

1 水利について

 水は小寺川と多布施川という、二つの川から引いている。多布施川は比較的大きな川であるため、いろんな地区が利用していたが、小寺川はさほど大きな川ではなく、下高木と上高木と兵庫町の3つの地区のみが利用していた。

 多布施川の井樋はボンボイイビとウエイビの二つがある。小寺川では至る所から水を取り入れていて、多々の井樋の名称は不明である。二つの川の外に、かつては干ばつの時などの緊急時の水源として蓮池があったが、その蓮池は今では埋め立てられていて、城北中学校になっている。下高木は蓮池を貯水池としていたが、水に困ったことはなく、滅多に利用する機会はなかった。蓮池の水は、通常時にはその周辺のわずかな範囲において利用されるのみであったらしい。

 

2 下高木一帯の昔について

 昔は、下高木一帯は米の収穫量が多く、特に川の下流方向に行くほど肥沃な土地であったらしい。下高木はその地区内の結束が固くて、生産組合長を注進として田植えや刈り入れの時期は他の人の田んぼでも手伝いに行ったりしていた。生産組合長は何年かごとに代わって、ほとんどみんながなれるようになっていたが、男性のみがなっていたので、女性に比べて男性の方がしこ名をたくさん知っていたのではないかと思われる。

 

3 下高木一帯の現在について

 昭和50年頃から宅地化が進み、10年ほど前に地名が下高木から高木瀬西と改名された。かつては前述のとおり蓮池があったが、宅地化による水田の減少に伴ってその必要性がなくなり、埋め立てられた。さらにその横には水産試験場があったが、今では住宅地に変わっている。

 

4 しこ名についての補足説明

 戦時中は、佐賀総合運動場のある場所に陸軍基地があった。その近くに、陸軍に所属している人たちの住宅地ができて、その前にあった水田は新屋敷と呼ばれるようになった。

 ガラン松には、かつて大きな松が植えられていて、それをみんなで燃やして水田にしたのでそのようなしこ名が付いた。

 二本杉と四本杉には別の呼び名があって、二本杉は奥座、四本杉はツヅミとも呼ばれる。

 新屋敷は「しいやしき」、四本杉は「よんほんすぎ」、カンコ柳は「カンコヤナイ」と発音していた。

 

5 今後の農業の展望について

 下高木一帯の水田は住宅化が進み、どんどん減ってきている。今ある水田も、後継者がいないために現在の世代までであろうということであった。

 

 

 



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