【神埼郡脊振村古賀ノ尾】

歴史と異文化理解A 現地調査レポート

1TE96533 井上栄一郎

1TE96561 堀口修一

月曜4限 服部教官

話を聞いた古老

 モリサキさん 大正510月生まれ

 ユズリハさん 昭和109月生まれ

 イシマツさん 昭和1011月生まれ

 ニシカワさん 昭和510月生まれ

しこ名について

 ハナフカミ

 サクラノキ

 ウチガエシ

 ハスモチ

 ウラダチ

 ナカンバタ

また古い池があったが、村の人たちはそれをツツミと呼んでいた。

 

当日の行動

バスを降りると一人の古老が僕らの方を見ていた。僕らは早速その古老に聞いてみた。「僕らは今日歴史の勉強でこの村にきたんですけれど、田ん中に昔から付いている呼び名があると聞いているんですけれど、ご存じないですか?

古老曰く、「知らんなぁ。」

「しこ名っていうんですけれど。」

「知らん。」古老は去っていった。

一気に力が抜けてしまった。とりあえず、僕らは組合長さんの家を訪ねることにした。地図で見ると集落が二つあった。途中で道に迷ったが、どうにか組合長竹本明実さんの家を探し当てた。が不在。区長の西川重登さんも不在。それから周りの家を訪ねたが不在。みんな畑に出ているようだった。どこに行こうという目的もなくただ歩いていると、一人畑から帰って来ている人を見つけた。僕らはその人の後をつけ家に着いた。僕らは縁側で話を聞いた。

「そうねー、そんな名前は今はもう使っとらんから、わしゃ分からん。たぶん、前組合長の西川初男さんなら知っているかもしれんなぁ。」

早速、その西川さんの家に行ってみたが、いたのは蛇だけだった。

手掛かりをなくしてまた歩いていると、杖をついて歩いている古老(ユズリハさん)を見つけた。

「ああ、しっとるよ。あそこに田ん中が見えるじゃろう。そしてその真ん中に川が流れている。その川の西側がハスワチ、東側がウラダチって言うんだ。」

「その他にご存じないですか?

「わしゃナガエのもんじゃけん、古賀の尾のことは何もわからんなぁ。」

話を聞いてみると古賀の尾にある二つの集落のうち、南にある方を「ナガエ」、北にある方を「古賀の尾の部落」と言う言い方をするそうだ。

またまた歩いていると庭の手入れをしている人を見つけた。その人にも同じようにして尋ねてみた。「ハスワチ」と「ウラダニ」のことを聞いてみると、知っているようだった。他には何か知らないかと尋ねてみると、例の川の上流に二つの溜池があることが分かった。小さくて古くからある方の溜池を「ツツミ」、大きくて新しい方の溜池を「ハスワノタメイケ」と呼んでいるそうだ。さらに、他にも知らないかと聞くと、

「もう分からんねー。明治生まれの人ぐらいならよう知っとるかもしれんが、そういうな人はもう墓場の中たいなぁ。」

この時点で僕らはすでに1時間以上歩いていたので、例の西川初男さんの家を遠くから見やりながら昼食をとることにした。いつまでたっても帰って来なかったので、二つの溜池を見に行くことにした。カエルがうじゃうじゃいる農道を上っていくと、山の麓に溜池が二つ並んでいた。新しい方の溜池からは水が流れていたが、古い方は銓がしてあって今は使われていなかった。

はっきり言って八方ふさがりだった。もう一度西川さんの家に行ってみた。西川さんの家では新しい家を作っているところだった。作業をしていた大工さんが僕らの声を聞きつけて降りて来た。

「西川さんは村祭りの打ち合わせで脊振神社に行っていて、今日はおらんよ。」

謎は全て解けた。畑で仕事をしているわけでもないのに、あの村の人たちが誰もいない理由が分かった。脊振神社は少し離れていたが、僕らはそこに行ってみることにした。僕らはこれでやっと話が聞きると思った。村祭りの打ち合わせというぐらいだから、そこには年齢90歳位の長老がたくさんいて、その人たちはきっと村のことなら何でも知っているのだ。と自分の頭の中で勝手に空想していた。

胸を踊らせながら歩いた。

神社に着いた。隣にある公民館で確かに会合が行われているようだった。失礼だとは思ったが、出て来た若い人をつかまえた。

「すみません。僕ら歴史の勉強で……。」

「ああ。じゃー、詳しい人を呼んできますんで待っていてください。」

僕らは天にも昇る気持ちで髭をふさふさ伸ばしているであろうその「長老」を待った。待つこと3分。公民館のドアが開いて1人の老人が出てきた。髭は伸ばしてはいなかったが、僕らを驚かせたのは、その顔である。赤い。真っ赤だった。そう、僕の考えは甘かったのだ。この人は、酔っ払っていたのだった。はっきり言って涙が出た。

もう期待はせずに一応聞いてみた。理解してもらうのに時間はかかったが、その人はこういった。

「何でもしっとるよ。」

まだ期待は半分ぐらいで地図を見せた。彼は地図が読めなかった。

何回も説明す、るとやっと古賀の尾の集落の場所を理解して話し始めた。

「ここが、サクラノキでここからがウチカエシ。そしてここがナカンハズだ。呂律が回っていなかったから、どうも胡散臭かった。何でも知っていると豪語した割には三つしか知らなかった。僕らはお礼を言って次に例のキーパーソンである西川初男さんを呼んでもらった。

初男さんが出てきた。そしてその顔を見てまた驚いた。その人はあの「知らんなぁ」といった僕らがその日一番最初に出会った男だった。まさに初男だった。結局西川さんからは何も分からなかった。

公民館横でそうめん流しがっていて僕らはそれをご馳走になった。僕はやけくそになってそうめんを食べまくった。しかし3時間も歩き回り疲れ切った心と体がそうめんなどでどうにもなるはずはなかった。

以上からの苦労話を描いただけのレポートとなってしまったが、本当に苦労したということだけは分かってほしい。



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