【佐賀郡川副町戸ヶ里地区】

歩き、み、ふれる歴史学レポート

1AG96225■ 三根崇幸

聞き取りしたおじいさんの名前と生まれた年

 江頭多太己さん:大正9年生まれ

しこ名一覧

田畑

小字〜のうちに

しこ名

戸ヶ里

トガリ(戸ヶ里)

大野

オオノカラミ

八龍

ハチリュウ

太左右衞門搦

タザエモンガラミ(太左右衞門搦)

萬才搦

バンゼイカラミ

新御舫搦

シヤンガラエ

オモヤ

ヒデカラミ

カワッパ

フウボウシ

イチバンメ

ニバンメ

イチバンデイ

ムギタガラエ

コウカ

フウボウシ

ワラスバガラエ

タイショウガラミ

オヤッカライ

ジンパチガラエ

ゴジュウニン

サンボンマツ

ヒラキ

デンベエ(伝兵衛)

イチバンガラミ

ニバンガラミ

サンビャッケン(三百間)

デイボイ

 

 

ヒラキ

デイボイ

 

一日の行動記録

10:30 僕はバスから降りた。僕は佐賀の大町出身なので田んぼばかりの風景がとても懐かしく感じられた。でもそれとはうらはらに一つの不安を抱いていた。それは「ここはどこだ。北はどっちだ。」ということだった。僕の外にも5人ほどここで降りたがみんなも方向が分からず慌てふためいていた。しばらくみんないろいろな方向を見ていたが、5人のうちの3人がとぼとぼと何か悟ったらしく南と思われる方向(実際は南だった)に歩いていった。残りの2人は運良く畑仕事をしている人を見つけ尋ねにいった。僕も付いて行こうかと思ったが、まねするのは格好悪いかなあと思っていた。丁度そのとき、北と思われる方向(実際北だった)1km先ぐらいに「〜方向は→」といった矢印がついている看板のようなものがふと目にとまった。これはチャンスだと思い一目散にその方向に10分ぐらいかけて向かった。やっとのことで着いてみるとその看板には「←白石・大川→」等書いてあった。僕はこれで方向が分かった。なぜなら白石は大町の南であり、大町は佐賀の西の方なので左は西、大川も十月にバドミントン新人戦で行ったところ、つまり福岡に近い方なので右は東だと分かったからである。

 しかし、問題は解決したわけではない。方角は分かったけれど戸ヶ里はここから東にあるのか西にあるのか分からない。それで何の解決法も見つからなかったので、とぼとぼと初めの場所に向かって歩き始めた。

途中、畑仕事をしている人に道を聞いていた二人に会ったが、彼らは自分の目的地が分かったとみえ、歩くのが速く見えた。それに対し自分は37.6度の熱があるせいか、あるいは自分の目的地が見つからないためか歩くのが遅く感じられた。そしてなすすべもなく、またひたすら歩いていた。すると、ふと、いい考えが頭に浮かんだ。大きな川を目指していこうという考えが浮かんだのだ。運良く早津江川を見つけ、川沿いに歩き、それから戸ヶ里港を見つけ、そしてそのまま戸ヶ里を見つける。何といい考えだと自分で感じた。そして大きな川らしきものがずっと南の方に見えたので、それに向かって延々と歩いた。その途中で戸ヶ里の目標物にしている海童神社下の宮らしいものがあったので、行ってみたが全然違うところで、結局犬に吠え続けられただけの無駄骨に終わってしまった。

しかしここでまだ11時だったのでまだ時間はあると思いマイペースで川に向かって歩き出した。そして遂に大きな川、早津江川に着いた。そして今度は戸ヶ里港を探し始めた。そして数分後、そういう雰囲気のところに着いた。しかし、そこは船はあるがあまり動いていなく、人はいるが釣りをしているだけで僕が思っている「港」というイメージはなかった。(しかし、後でよく考えてみると村の港だからこういうものだろうかなあと思った。)

しかし、一応ここを港と仮定して地図と合わせて道路を歩いていくと、道の曲がり方、道の数、道の方向、すべてがあっていたので、やっとこの時、自分のいる場所を地図上で見つけることができた。このとき1115分。

さあ、後は目標の海童神社下の宮を探しに行き始めた。すると何か「カーン」とか「コーン」とか「ワー」とかいう音が耳にたくさん入ってくるようになった。何だろうと思い足早にその音のする方向に行くと、ゲートボールの試合があっていたらしく、大勢のおじいちゃんとおばあちゃんが集まっていた。僕はその様子を見たとき運がいいなとふと思ってしまった。なぜならしこ名を知っている人たちがこの中に絶対一人はいるはずであり、探しに行く必要もなくなの、時間の節約になるからである。

さらに運がいいことに目標にしていた海童神社下の宮らしき建物がその場所にあった。それでともかくその場所へ期待に胸をふくらませながら歩いて行った。そしてその場所に行った。さて、誰に聞こうかなあと迷っていたがゲートボールの試合をしている人に尋ねるのは悪いなあと思って、ちょうどゲートボール場の外を掃除している60才ぐらいのおばさんがいらっしゃったのでその人に尋ねてみようと思った。

しかし、ここでふと思った。おばさんはまだ少し若いのでしこ名について何か聞いても理解されないかもしれないと思い、まず、ここにある海童神社下の宮っぽい建物が海童神社下の宮であるかどうかをお聞きすることにした。そして僕はそのおばさんのところへ向かった。なぜか僕は一人だけの班にされ一人だったので、ちょっと緊張しながら歩いてまった。そしておばさんの前に行って、ちょっと尋ねた。

「すみません。この神社は海童神社下の宮ですか?

おばさんは「そうよ。」そして僕はさらに確信を得るために地図を見せ、「本当にここの海童神社ですか」と尋ねた。するとおばさんは「そうそう。この場所ですよ。」と答えて下さいました。僕は第一の目標は達成したという気持ちでいっぱいで、そのおばさんにお礼を言った。

 今度は第二の目標の詳しい情報をもつおじいさんを見つけるためにゲートボール場へて行ってみた。しかし、どのおじいさんもゲートボールの試合に集中していらっしゃったので聞き取るには難しいと思い、いったんゲートボール場を離れ、ゲートボールの試合が終わるぐらいにまた来ようと思い、ゲートボール場から離れた。

 ゲートボール場の外に出て何をしようかと思ったけれど、ゲートボールの試合が終わるまで地図の道や家が現在とはどのように違っているのかを知るために歩いてみようと思った。そして地図のとおれに途方もなく歩いていった。その村の川の狭さ、田んぼばっかりの様子は僕の故郷の大町町の小通りによく似ていたので、とても懐かしく感じた。ああ、お正月はまたこのようなのんきで自然的な風景の中で何日かを過ごせるのだなあと思いながら……。そして2030分ぐらいたったのでそろそろゲートボールの試合も終わっているかもしれない(ゲートボールの試合時間は45)と思い、再びゲートボール場へと向かった。運良くゲートボールの試合が終わっているコートがあったので、何人かのおじいさんが帰ろうとなさっていた。そこで今がチャンスと思い、一人のおじいさんにしこ名について尋ねてみることにした。

「九州大学の授業で田んぼのことについて調べているんですけれど、この辺の田んぼのしこ名についてご存じですか?」と尋ねた。

 するとおじさんは「しこ名?」という風で何のことか分かっていらっしゃらなかったご様子だったので、「しこ名というのはこの辺で昔から使われている田んぼの名前、つまりあだ名のようなものです。」するとおじさんは「ああ、そのことか。でも私はこの辺のものではないけん、そいについてはあまり分からん。」とお答えになられた。

 少し僕はがっかりたけれどもひるむことなくすかさず「じゃあ、このゲートボールをなさっている方の中で、この辺の田んぼのしこ名について詳しい方はいらっしゃいますか?」と尋ねた。そしたら「ちょっと、待っとって。」と言って向こうの方に歩いて行かれた。

 僕はこの中にいっぱいしこ名を知っている方がいらっしゃればいいなあと願った。そして老人と仲良くなる方法も既に考えていた。それはいっしょにゲートボールをすることだった。僕は自分の故郷でおじいさん、おばあさんに混じって小学校5年の頃から中学2年までゲートボールをしていた経験があり、その腕もその頃は小通り1と呼ばれたほどで実績としては大町の町内親子ゲートボール大会優勝、佐賀県内親子三代ゲートボール大会3位という輝かしい記録をもっている。そして、いつだったか、ゲートボールの試合で監督を務めたことがあり、おじいさん、おばあさんに「そこはこうするように」と命令したこともあった。

 また、その時と同じようにゲートボールを通しておじいさんと仲良くなってしこ名のことについていろいろ聞こうと考えていた。

 数分後、尋ねたおじいさんが別のおじいさんを連れて戻って来られた。おじいさんは僕にそのおじいさんのことについて話された。「こちらのおじいさんは区長のお方で、この人に聞けば分かるよ。」と。そこで、あらためてそのおじいさんに同じことを尋ねた。すると「どいや」と何か怒った様子で答えられた。僕はこのおじいさんは怖いなあと思った。そして地図を見せて説明した。すると、そのおじいさんは分かったらしく、「ここはトガリ、こい全部オオノカラミ、そいはハチリュウ、いや違った、ここがハチリュウだ。」と答えて下さった。でも自分は一つの田んぼごとにしこ名があると勘違いしていたので「本当にこい全部なんですか?」と尋ねた。そしたら「ああ、そうだ。」と答えて下さった。

 その時はじめてしこ名は田んぼ一つごとにあるのではないことが分かった。結局、そのおじさいさんから聞けたしこ名の数は9つだった。しかも、何か記憶があやふやそうだった。それで不安になった。しこ名を小字と間違っていらっしゃらないかなと思ってしまった。まあ、一応しこ名を尋ねるだけ尋ねたのでいいやと思い、名前と生年月日を尋ね、お礼を述べゲートボール場を後にした。時間は12時丁度だった。そろそろ昼ご飯を食べたいなあと思い始めた頃だった。そして周りを見渡すとお年寄りの数が減っていた。僕はお年寄りもお昼なので家の中に入り、昼食を食べていらっしゃる頃だろうと思い、今尋ねても迷惑になるだろうと思い自分も昼食をとることにした。

 ところで昼食は持って来ていたけれども、僕は一人だったので一緒に食べる人がいなかった。体だけでも暖かくなろうと日当たりが一番よい港で食事をとることにした。しかし、港に人影はなく、川からの風で逆に寒く、心も体も冷たくなった。しかし、ごはんがおいしかったので、少しはよかった。

 そしておじいさんたちが外に出ていらっしゃる1時までの間は休憩しようと思い、その場でひなたぼっこをしていた。そして1時になった。

 午前中で9個。1(2)のノルマは20なので、本当は僕は10個でいいのではと思いながらも、残り3時間で残り11個を探さなければならなかった。行く当てもなかったので、またゲートボール場に行ってみるかと思い、再度ゲートボール場へ行った。しかし、そこは誰もいなかった。そこで僕は地道に聞くしかないと地図を見ながらふらふらと歩いて行った。初め今度は南の方に行ってみようと思い、南へと向かった。しかし、南の方には誰もお年寄りがいるふうでもなかったので、お年寄りが出ていらっしゃるまでその付近をぐるぐると回っていた。そしたらおばあさんが一人家から出て来られるのが見えたのでそこに行き、おばあさんに尋ねた。

おばあさんは「バンゼイ」というしこ名を教えてくれた。ここであと8つ。

今度は西の方向へ行ってみようと思い西へ向かった。しかし、西へ向かったのは良かったのだが、これまた一人もいらっしゃらない。疲れてとぼとぼと歩いている行くと前方に食堂が見えた。丁度ジュースも飲みたかったし、トイレも行きたかったので食堂へと向かった。

食堂に着くとトイレを借りた。それからジュースを買った。ジュースは何にしようとか迷ったけれども、熱が少しあるし、疲れてもいるので力が出るようにと思い、リアルゴールドを買った。それからまたお年寄りを見つけて歩いて行った。今度は考えを変えて、普通の道ではなくて、田んぼ道を歩くことにした。

その考えは当たり、あるおじいさんに会うことができた。おじいさんは四つのしこ名を教えて下さった。そしてまた歩いて行くと今度はおばあさんに会った。おばあさんはあまり覚えていないとおっしゃられたが、ここは昔、でいぼうがあったので一ばんでいと呼ぶんだよと教えて下さった。

そして地図を見て、「こいがもしハウスやぎい。こいはヒデガラミ」と教えて下さった。それで僕は早速ハウスの位置を確認しに行った。しかしハウスはあったが、地図とは違うところにあったし、道路も増えていて分からなかった。そこで地図にヒデガラミと書くのはやめようと思った。残りあと7つ。もう少しだと自分は思った。この時2時。

しかし、この後誰とも会わずに30分の時間が過ぎ、休憩を取ることにした。この間10分。この10分の間、僕は一人なんだから「これだけ集めればいいだろう」とか「いやだめだ。まだ足りない。」という思いが交互に心を飛び交った。結局あと一時間ぐらい歩いてみようと思って歩いてみた。すると運がついてきた。

ある家の庭で田んぼの機械をさわっているおじいさんを発見し、しこ名について尋ねてみると、おじいさんはしこ名をとてもよく知っていた。その数約20(重複あり)。僕はとてもうれしくなり、そのおじいさんにとてもとてもお礼を言った。そして気分は楽になった。結局、今、28個ぐらいのしこ名を手に入れることができた。やっと帰ることができる、うれしいと思った。この時、3時丁度。結局1時間ぐらい余ってしまった。今から何をしようとかと迷った。遊ぶか、寝るか、続けるか。

しかし、僕は多くのしこ名を手に入れることで新たな欲望をもった。それはもっともっといっぱいしこ名を集めてやるというものだった。それで、また、お年寄りを探し始めた。しかし、あまり見つけることが出来ず、330分になったので集合場所への道を見つけるかと思い、、歩き出した。この選択は後でとても重要になるのだった。しかし、自分がどこから来たかあやふやにしか覚えておらず、結局歩き回ってやっとその場所に着くと既に45分。バスが来る5分前だった。その時、危なかったと僕は思った。

結局、しこ名を調べることができ、バスに間に合ったのでいい一日だった。

 

 

(感想)

 僕は佐賀の大町町小通り出身だったのである程度佐賀弁には慣れていたので、話し合いはスムーズにできたと思う。最初は怖いと思うお年寄りがいっぱいいらっしゃったが、話してみると優しかった。結局、おじさいさん、おばあさんはみんないい人たちだった。



戻る