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【佐賀郡東川副町鰡江、五軒家地区】 現地調査レポート 1AG96198■藤井清吾 1AG96199■藤川慎一 中島トシコさん：大正5年生まれ 鰡江 田畑 小字屋敷田のうち ナガオサ、イッチョウウラ 髙島芳雄さん：大正15年生まれ 鰡江 水路 小字屋敷田のうち フクズミヨコボイ、ツンツボ、コボイ、サキコボイ 田畑 小字屋敷田のうち ツンツボ、ナギャーバシ 田畑 小字二本松のうち 三角、スミダ 福岡トヨコさん：昭和２年生まれ 鰡江 田畑 小字二本松のうち ハコダ(箱田) 野田キミエさん：大正10年生まれ 鰡江 田畑 小字屋敷田のうち ニチョウガク、ミノナカ、ジャージンゴサン、シゲンナミ、八ノ角 田畑 小字二本松のうち マガリ、カノイノウチ、ヤキバノウチ、サキガエノウチ 田畑 小字三本松のうち ウラダ 水路 小字屋敷田のうち カメボイ、カミヘイダバシ 糸山辰一さん：昭和3年生まれ 田畑 小字五本松のうち ナカノハシ、ジロウマ、コバシ 田畑 小字一本谷のうち サキナシ、ヒラキ、ヒラキノニシ、ヒラキノヒガシ、ウラダ 糸山邦夫さん(区長さん)：昭和2年生まれ 五軒家 水路 小字一本谷のうち ナカシマ(隣村の人はウマボイと呼ぶ)、タテボイ 田畑 小字一本谷のうち オセンジョウ(小船場)、ミナミカシラ、キタノデグチ、ナカシマ 田畑 小字五本松のうち ジロウマ 田畑 小字三本谷のうち ムコンギシ(向こん岸)、ガク、イビジイ、カナギボイ、ミナミノデグチ 行動記録と古老から教えていただいたことについて ① 行動記録 崎ヶ江でバスを降りて、まず鰡江の方向へと向かった。駐在所で詳しく場所を聞いた。5000分の1の地図を見せると「えらい古い地図やね。」と驚かれていた。 鰡江に着くと、洗濯物を干しているおばあさんがおられたので早速話を聞いた。その人は中島トシコさんという人で、大正5年生まれ。自分たちが「圃場整備が行われる前の村の方で呼ばれていた田畑の名を教えて下さい。」と言うと分からないと言いながらも二つくらいのしこ名を教えてもらった。 中島さんは「西村ハルオさんがそういうことをよく知っとう。」と言われて次に西村さんの家へ向かった。西村さんは留守でおばあさんだけが在宅だった。そのおばあさんの紹介で髙島芳雄さんを教えてもらい訪ねた。 髙島さんは大正15年生まれで、たくさんのしこ名を教えてもらった。 次に髙島さんが区長である野田フミオさんを紹介して下さったけれど留守だった。息詰まって歩いていると畑仕事をされている野田キミエさん(大正10年生まれ)を見かけたので、早速話を聞いてみた。キミエさんはしこ名だけではなく用水を配分するための慣行や旱魃のときのことについても話をしていただいた。キミエさんの紹介で福岡さんの家を訪ねたが留守であった。代わりに福岡トヨコさんに一つしこ名を教えてもらった。そこで聞いた話については後半に記したい。 結構な量のしこ名が聞けたので、次の五軒家に向かった。五軒家では紹介なしで目に付いた家を訪ねた。糸山辰一さん(昭和3年生まれ)はクリークについての話や、そこでの肥料の配分についての話をしてくださった。それからしこ名を聞けた。辰一さんの家を出てすぐ、畑仕事をしているおばあちゃんに話を聞くと、おばあちゃんは自宅から区長の糸山邦夫さん(昭和2年生まれ)を呼んで下さった。たくさんのしこ名としこ名の由来(これは邦夫さんの想像を含む。)、それから辰一さん同様、クリークについての話などもしてもらった。 行動記録については以上であるが、次にその内容についてまとめていきたいと思う。 ② しこ名 鰡江、五軒家ではたくさんのしこ名を聞くことができたのだけれど、その中でしこ名の由来について、これは話し手の想像だけれどまとめていきたいと思う。 鰡江についてはまず「ナギャーバシ」。これは長い橋という意味で近くに長い橋があったことからきたらしい。 次に「カメボイ」。これは昔その水路に亀がたくさんいたことに由来しているとのこと。 「カミヘイダバシ」は、平田橋の上の方向にあるためだそうだ。 五軒家については、まず「ナカシマボイ」。昔は堀が大きくて中に島があったことからくるということ。次に「キタノデグチ」「ミナミノデグチ」。これは吉村の北と南に位置していることからくるらしい。また「サキナシ」は水路の先が切れているところの田であるためにサキナシとなっている。最後に「オセンジョウ」と「ムコンギシ」は、昔、その周辺は海で御船場と「御」がつくことから、それなりの身分の高い人がそこに船をつけたとされている。その向こう岸という意味で「ムコンギシ」と付いたらしい。 ③ クリークについて 鰡江での話によると、堀を引くとき、下の者は上の者に許可を得てから引いていたということ。「水に関して困ったことはありますか?」と聞くと、フクズミヨコボイという大きな堀があって、鰡江はそこから堀を引いていて、周りが堀に囲まれていたので水に困ることはなかったらしい。 五軒家での話はより興味深いものだった。昔は肥料がなかったので、堀の中の泥土を肥料として活用していたため、各自の持ち分を決めていたらしく、水よりも泥土の分配が村々ではより重要だったということらしく、隣村との境の堀は真ん中に竹を置いて仕切ることによって分配していたらしい。 また、水路上のヒシという食用の植物の分配についても村々で取り決めをしていたということ。例えばナカシマボイの半分の泥土とヒシが五軒家の持ち分というようにしていたらしい。 クリーク 低湿地に網状に分布する人工の水路。灌漑、排水、交通のための小運河。佐賀平野などに多い。 ヒシ 池や沼にはえるヒシ科の一年草。茎の先端に菱形の葉を放射状につけ、葉は水面に浮く。夏秋に白い四弁花を開く。果実は食用。 (参考)「日本語大辞典」講談社 感想 準備をして行ったとはいえ、いざバスを降りてみると、何となく不安になった。村の人たちがとても親切に話を聞かせてくれたことが不安をなくさせてくれた。5,000分の1の地図は昔のものだけれど今見ても水路の多いところだなあといった印象を受けた。もっと店なんかがないか所かと思ったけれど、セブンイレブンやラーメン屋などがあって昼食もとりやすかった。 水、泥土、そしてヒシまで村それぞれの配分の決まりがあったということに驚いた。今回の佐賀現地調査レポートはとてもいい経験となりました。 |