【佐賀郡富士町苣木・葛尾地区】

現地調査レポート

S1-16 1TE96571 生田 忍

S1-16 1TE96596 児玉貴志

 

<行き先>

佐賀県富士町苣木、葛尾

 

<古老の名前と生年>

苣木

 飯笹さとるさん 不詳

 松永広司さん 明治44年10月

 

葛尾

 篠原典彦さん 昭和3年10月

 

<しこ名>

苣木

 楠根、三反田、井手口、まつんごおり、かいまんだ(もうない)、ひざがき、

しゅつえんだ、つるのこえ、こむらだ、舟石、前田

 

葛尾

 裏田、前田(みゃあだ)

 

<字>

苣木

 岩詰、坊主石、向野(むかえ)、新吾田、荒平、鳥越、竹本、大園、市手迫、中尾、三谷、島田

 

葛尾

 風呂、吉原、土穴、わたうち、向野、前野、中松魚、三反田、竹本

 

※今回、僕達が行ったのは富士町の苣木と葛尾であるが、どうもしこ名と字がごちゃ混ぜになっており聞くのに苦労した。古老の話では田んぼ1枚1枚を呼ばず2、3枚まとめて字で呼ぶそうだ。特に葛尾ではその傾向が強く、全くしこ名を聞けなかった。(前田、裏田ぐらい)

 

<ACT.1 苣木>

 7月14日、日曜日くもり。僕達を乗せたバスが目的地に近づくにつれ上空の曇りは更に濃さを増していった。やがて雨が降りだし北山ダムのところではどしゃ降りになってきた。傘を忘れた僕は一抹の不安を抱きながらも地図を見ながら現在位置を把握することに集中した。

 やがて、何人かがバスから降りていき僕達の番となった。雨は小雨程度であり僕をひとまず安心させた。持万橋のところにバス停があった。帰りに乗り遅れた場合を考えてバスの時刻表を見に行ったのだが、それらしきものはなかった。さらに増加した不安を抱きながらも僕達は聞き込みを開始した。

 

<ACT.2 苦労>

 住宅地図を見て一番近い家から攻めることにした。まずは山口武一さん宅に行ってみるが5、6回の呼びかけにも返事がなく、次の家に行くことにした。

 次の家は山口善行さん宅である。しこ名を教えて欲しいと言ったところ“しこ名”という単語が通じずに焦ってしまった。困っていると飯笹さんがよく知っているから行ってみるといいと、アドバイスを受け、さっそく行ってみることにした。この飯笹さとるさんがとてもいい人であった。僕達の質問に懇切丁寧に答えてくださったのだ。役所に勤めていたという飯笹さんはさすがにいろんなことを知っていらっしゃいました。それでもよく知らないこともあるということで、松永広司さんを紹介してもらいました。松永さん宅に行くまでに公民館があり、そこで昼ご飯を食べました。正面玄関も窓も開いていたので中で食べようかとも思いましたが、面倒な事になったら困るのでやめました。さて上記の古老2人の話をまとめると次のようなものです。

 『一般にしこ名といっても各家庭により異なるということ。家の前の田んぼは前田、裏の田んぼは裏田等というようにだ。(前述のくり返しになるが)また田んぼはしこ名だけではなく字でもよばれるという。つまり、しこ名と字がごちゃ混ぜになっているらしい。田んぼの水利については川の両脇に田んぼが作ってありそのまま枝道式に水を入れるのだそうだ』(図省略)

 …話を聞き終わってから気付いたのであるが慣行等について聞くのを忘れていた。もう1つの目的地である葛尾に行かなければいけなかったので、帰りに聞きにまた戻ることにして僕達は苣木をあとにしたのです。(ACT.4において書きます)

 

<ACT.3 葛尾>

 苣木の調査が終わり次の目的地、葛尾へと向かった。勾配が急な曲がりくねった坂をぶつぶつとグチを言いながら歩くこと30分やっとついた。一番小さい家で区長さんの家を尋ねるとなんと市川の一番遠いところにあるそうだ。つまり葛尾と市川はひとまとまりと考えられており区長さんは市川にいらっしゃるそうだ。…ということはここを調査すべきは市川にいった酒井、谷田両名ではないかという疑問も浮かんだが、ひとまずこの辺に詳しい人の家を教えてもらった。古老(篠原)典彦さんはテレビをみていらっしゃったようで話の途中でそっちに注意が行きそうになり、少し慌てた。話は次のようなものである。

 『ここではしこ名で使うのは前田(みゃあだ)と裏田くらいであり、あとは田んぼ2、3枚を字でよぶそうだ。葛尾と市川の範囲で円を描くように8〜9の字がありそれぞれ風呂、吉原、土穴、わたうち、向野、前野(みゃあの)、中松魚、竹本だそうだ。あと慣行については、正月まつりとおくんち、八房様(さん)まつり、5月1日にやるはっさく行事に似ている青年団による火付けまつりがあるそうだ。』

 

<ACT.4 帰還>

 僕達は足取りも軽く葛尾をあとにしました。来るときはきつかったのぼり坂も、楽な下り坂となり鼻歌でもでそうな気分でした。

 さて、苣木に戻った僕達は再び古老のところに慣行について話を伺いに行きました。

 『1月11日、伊勢神宮まで行く伊勢神宮祭り、7月28日なかばる神社の神様(さん)祭り、7月30日川の神様をまつる水神祭り、1月・8月1日のもみやの火付け、1月・8月15日のよこうら神社礼祭、12月の諏訪神社祭り、大体以上です。』

 

<ACT.5 最後にいいわけ>

 文中の固有名詞で平仮名なのは、古老のあまりのハイスピードの会話でメモするだけで精一杯、漢字を聞くひまもないほどだった。一応可能な限りはお聞きしましたが、御本人達もわからないものがあるそうです。

 



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