佐賀県水田調査レポート/佐賀市北川副村/角町・犬尾・東西

<調査者>

久貝文彦 福元克俊

久間啓司 西村伸一

市毛敬介 杉本浩一

 

 

今回我々は6人で3つの村の水田のしこ名の調査を行なった。6人で調査を行なったのは、2~3人で1つの村を調査するよりもより行動的かつより多くの情報を得ることができると考えたからである。以下、現地にて聞きとりの際使用したノートをもとに聞き取りの方法、内容、そして成果を示す。

 

<場所> 角町、犬尾、東西

 

<方法>

 情報を得ることのできる年齢の高い人々に的をしぼり、朝食がおわり食休みをしている時間、昼食が終わり食休みをしている時間を集中的に、家にいることの多い土曜日を調査日に選んだ。調査回数は2回でなるべく多くの人物に会うことをこころがけた。

 聞き取りの具体的な方法は、先日、先生からいただいたマニュアルを利用しそのままきいてまわった。しかし、このように具体的な内容に入るまでが非常に困難であった。その理由として、その付近にはどうやら悪質の宗教団体が出没するらしく、本題に入るまえに我々があやしい人物だと思われることがしばしばあったからだ。

 また留守にしている人物については、その人のいる場所までおとずれ情報を提供してもらった。

 我々は情報を提供してもらう立場なのでどんなに関係のない話であっても笑顔でその話をきき先方の機嫌を損なわないように、また礼儀を決して忘れないようにたえず努力した。

 

<内容>

 では、具体的にどのような内容を聞いたかというと今回の調査の目的である水田のしこ名が第一。また、知っている人についてはそのしこ名の由来も聞いた。

 

<成果>

 では各地区における調査の成果を地図及び以下に示す。

(角町)

 地図(佐賀県立図書館所蔵)で見てもらってもわかる通り2回の現地調査における成果は、ほぼ0に近かった。この理由として次のようなことがある。1番大きな理由としてはこの角町には古老とよべる70才から80才のお年寄が一人もいなかったということである。区長は47才で、若すぎてしこ名については何もしらないとのことだった。実際は、お年寄がいなかったというわけではなかったのだが、いたのは、みな女性ということで水田のしこ名については誰ひとりとして知っている人がいなかった。また、60才程度のお年寄はいたものの、彼もしこ名については何も知らないとのことだった。角町の一件、一件の家をあたってはみたが、みな、しこ名について知らなかった。このことからこの場所のしこ名を知る手段はないと考えられる。

 

(犬尾)

 地図の左側にかいてある場所がこの地区の現地調査でわかったしこ名やその付近の昔の橋のよび名である。この地域で情報を提供してくれたのは、轟木保氏と西村満太郎氏の2人である。轟木氏は元市議会議員で自分の持っていた田のしこ名をすべてしっていたが、あいにく、この地図では左側がかけていて島田と柿田以外は示すことはできなかった。なおその他のしこ名は現在の田の名前との対比で今回資料として、共に提出することにする。またしこ名の由来に関しては、知らないとのことだった。轟木氏は、非常に合蓄のある人物で歴史やその地区付近で発掘された物についても様々な知識をもっておられた。

 もう1人の情報提供者は西村氏で彼は今年で80才になるという。彼は、老人ホームにて昼食中にもかかわらず我々の訪問を快く迎えてくれた。彼の知っているしこ名は「円明、めんだ、しのつぼ、のびらき、ろくじぞう」とあまり多くなかったものの、それらの何こかの名前の由来をしっていたことは大変興味深かった。彼の知っていたしこ名の由来を以下に書き示す。

 

めんだ…その昔西宮神社にささげる米をつくるために山津の人々がこのめんだで米をつくったというのが由来

円明…その昔、あった円明院という寺にあやかってつけた増田辺りの田

野開(のびらき)…かつて田ではなかった所を人々が開たくして田にしたのでこのようなよび名になった。

ろくじぞう…6つの地蔵を大切にまつる気持ちが田んぼにもこの名をつける。

 

西村さんによると今は田んぼの形がかわり昔つかわれていた名前も当然つかわれなくなった。それとともに彼もその名を忘れていったという。我々に話をしながら昔の様子を彼は思い出していたようだった。最後に彼はいずれ消えゆくしこ名をこうやって書きとどめようとする行為に敬意をはらい我々にねぎらいの言葉をかけていただいた。

 

(東西)

 東西を20分くらい回ってから適当な人の家に聞いてみて、このへんの地名をよく知っていそうな老人のことを聞いてみた。すると、その近所の宮地菊次(89才)という方がよく知っていそうだ、ということだった。その家に行き、その老人にさっそく聞いてみた。最初にしゃべりはじめた地名は三本杉などという名前であった。そういう名ではなく、家の中でむかしから使われていたような名前と言ってみると、納得したようで「ろくじぞう」などの名前がいくつか出てきた。知っているもの全てを聞き終わって、他によく知っていそうな人を聞いてみたが、もうこのあたりにはいないということで、調査をそこで切り上げることにした。

 

三本杉               木原田

一本杉 一、二           島田

一本松 一、二  四本松      増田

一本松 四             イモ田、ウラ

    五             川向ウ、隣ノ裏、ウチノウラ

    六、七           蓮堀端

    六             苗代

    七             蓮堀

二本松 五             十六田

三本松 八             長尾

    八、九、十一        屋敷ノ内

四本松 一             ガメ堀(ガメボイ)

    三、四           道信橋ノ田(ドーシン)

    十一            原野、増田畷

二本谷 四             幅廣

二本谷ノ四             羽廣



戻る