【杵島郡江北町上分、下分、野口地区】

中世の村と人々レポート 

調査日:7月14日(金)

SU-29(農学部)1AG94146 晋一郎

1AG94147■  椿 真一

1AG94153■  徳田

1AG94178■  長濱

@しこ名聞き取りの方法と内容

 上分、下分については、生産組合長の方がともに不在であったため、その付近の農家らしきお宅にお邪魔して話を伺った。

 下分では比較的しこ名に詳しい方(百武孝光さん、大正13年生)とお話する事ができたが、その方は、下分の北部については小字名しかご存知なく、他の人にお話をうかがう時間的余裕がなかったため、これを調べる事ができなかった。

 下分での調査後、昼食をとって上分へと向かったが、前述の通り、ここでも生産組合長さんにお会いできず、この集落で最も詳しいと紹介された百武三男さんをはじめ、数人にお話を伺ったが、小字名以外のしこ名を知っている方はおられなかった。しかし、水路の呼び方については、地図をご覧になればわかるように、わずかではあるが知る事ができた。これらの年配の方の話は、テープに大部分を録音してあるので、地図とともに参照願いたい。 (地図は佐賀県立図書館所蔵)

 野口での約束の時間がせまったため、上分を後にして野口へと向かった。野口では、組合長さん宅に、数人の年配の方が集まっておられた。しかし、小字名以外の水田の呼び方について詳しく覚えておられる方はいらっしゃらず、昔の地主さんの名前のようなものならば分るといわれたので、それを調べて地図に記入した。そして、しこ名についてよりご存知だという昔の地主さんのお宅を何軒か紹介していただき、訪ねてみたが、いずれも留守であったり、既に昔の事についてご存知の方はおられなかったりとの事であった。こちらも、生産組合長さんのお宅での会話はテープに収めてあるので、参照にして頂きたい。

 

Aしこ名聞き取りの成果

 これについては、地図にまとめて記入してあるので、ご覧になればお分かりになると思うが、念のため以下にも記しておく。

 

《収集地点》

<下分>横寄、十ノ角、八ノ角、上ノ樋、大篭、金の充、与皿左衛門、次右衛門、長久、貝原

    (※は現在の小字名と一致、◎は下分で聞いたが、実際には上分にある。)

<上分>二間堀、九ノ角(いずれも水路の名前)

<野口>徳寿田、平木、白倉、しんがい(白倉の一部)、岸川、岸川(前述の岸川とは違う地主の所有地)、角田、石川(以上、田んぼの名前)

    じゃあち、船橋、馬洗川、うーぞぼり、かんのんぼり、さらみぞ(以上水路の名前)

 

B水利について

 今回、我々が調査した上分、下分は大字佐留志、野口は大字惣領分にあたり、前者は南方にある六角川の水を中心として利用するのに対し、後者は北の羽佐間水道(配布された地図よりも北側にある)の水を引いているという事だった。テープにも録音されている通り、昨年の干ばつでは、上分、下分では大凶作であったのに対し、惣領分は例年通りの収穫があったそうだ。

 上分の人の話では、昨年も含めて、これまでに2、3度、惣領分から水を分けてもらった事を記憶しているとの事だったが、野口の人の話では、お互いに相手が水不足だからといって水をわけてくれとか、わけてやるという事はないということだった。

 また、上分では、整備される前は、現在より水路も深かったため、佐留志で水不足になるというようなことはなかったと話しておられた。

 

C全体のまとめ

 今回の調査では、下分、上分、野口の順にまわったが、我々が期待した程、しこ名などを調べる事ができなかった。この原因としては、他の町ではどの程度情報収集できたか分らないが、江北町では他の町より圃場整備された時期が早かったせいか、年配の方が子供のころには、既に現在の小字名で水田を呼ぶようになっており、それ以前にしこ名があったことは知っているものの、どこがどのようなしこ名であったかは全く覚えておられない方がほとんどであったこと等が考えられる。下分の八ノ角、十ノ角といった呼び名は、他の集落の方もご存知であり、比較的最近まで使われていたようである。

 上分、下分で、生産組合長の人にお会いできなかった原因については不明であるが、ともに自宅には誰もおられず、近所の人に尋ねても、どこに行かれたか分らないとの事であったうえ、他の時間に何度か電話をしてみたが、やはり不在であったため、この方たちとの接触は諦めた。

 また、野口では、生産組合長さんをはじめとして、他の集落よりも多くの人にお話を伺うことができたが、元来、この村は商人の村であり、周辺の水田は他の集落(下惣など)の地主さんのものであったため、しこ名の聞き取りは困難であった。しかし、昔自分が耕した事があるという水田のしこ名についてはご存知の方もおられたので、テープレコーダーをもう一台準備するなどして、2人ずつのグループに分かれてより多くの人に話を伺ったり、生産組合長さんだけでなく、土地の所有者や元地主の方にも事前にアポイントをとったりする事ができれば、より多くの成果があげられたと思う。

 水利については、下分、上分と野口との境で、そのあり方が見事に分れており、両サイドからの大変興味深い話を伺う事ができた。これについては、本レポートのBの部分や、テープを参照して頂きたい。



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