【杵島郡江北町花祭、白木地区】 (代表)1AG94002■ 安藝大輔 竹田崇 田村泰貴 1.花祭について 太郎浦、上ノ久保付近は畑ばかりでかつては養蚕がさかんであった。したがって田ん中のしこ名はほとんど不明であった。真廣も同様に不明であった。この地区についてはあまり明確に伝わっているしこ名はなかった。個人的にはつけていたのだが、村の人々にはわからないもので大まかにきめたものしか存在しなかったようである。例えば、東百合野にあった田ん中。 用水の供給源については、北部を一級河川が多久に流れている。溜池は6つある。まず東百合野に上溜池と下溜池、さらに西百合野に木下溜池、横谷には横谷溜池、峯の上に飛郷溜池、宝満には宝満溜池という名がついている。用水路にはゴルフ場へ向かう水路に葉山線という名がついていた。 橋には名前がついているが小さいものにはついていない。県道にかかる橋が高良橋、前田地区に前田橋がある。トンネルも鈴山トンネルがあるが岩盤がむき出しであるということで危険であり、現在使われていないということである。 ここを調査したときに話の中にあったことは土地改良事業(地区共同施行)の話である。49年着工され、12町ばかりの田ん中を改良し、12年を要したそうである。1反ばかり(100平米)を目標として水は溜池からおとすのであるが、他に堤防を管理したり、野焼(これは年2回行われるが)したりといったものは今も行われているそうである。 2.白木について 白木においては花祭とは対照的にしこ名が残っているのが確認された。浦山には「浦ん谷」、「こうじがたい」、菖蒲谷には「おこんごう」、前久保には「いのしい」、西浦には「ぶけんしゃ」、鹿ノ尾には「苗代田(のうしろだ)」、白木には「ひわのぎだ」、「うえんやま」などか確認された。列記のように口伝に伝わったもので音でしかわからないというしこ名も多いようである。 一方水路にはしこ名はついていないが、例外として浦山を通っている水路には「殿の川」、前久保を通っているものに「ダイコン川」という名が残っているようであった。溜池については、白木につつみ、小坂に白木第二溜池、あと鹿ノ尾に2つ、鹿ノ口、前久保に1つずつあるそうである。このうち鹿ノ口の溜池は重要で7〜8万トン級のものであった。地形的に山がちであるため橋がかかっているところはないとのことである。 これは花祭においても耳にしたことであるが、炭鉱を掘ってしまって以来、溜池の水がなくなることもあったようである。それ以前はどんな日照においても両地区で水が干上がってしまったことはなかった。また両地区共通して耳にしたことがもう1つあるが、水利権の問題である。雨水などをためて栓をおとして水を貯めるという方法であり、上の方は受け持ち区域の水を使い、下の方は自然に貯まっていくのである。このため、水利権は下にあり、下の許可がないと上も水をひいて溜池はできないということであり、市役所も加わり、両者話し合いのもとに決定されるそうである。 我々が訪れた地区は、山間部に位置するところで聞き取り調査は困難をきわめた。さらに大雨で到着が遅れるというハプニングもあった。しかしそれにもかかわらず親切に説明、もてなしていただいた花祭・白木の木下康行、谷口忠治の両氏には感謝の念でいっぱいである。 |