【杵島郡有明町上田野上】 現地調査レポート 1LA94173 中原 恵子 1LA94171 中島 美和
話者:稲富 国治さん(昭和7年1月生) 千恵子さん 大井出 茂さん(昭和2年生)
*しこ名一覧 ・はつほざき ・ひゃくえもんだ ・ろくえもんさんがたまえ ・明治がらん ・大正がらん ・昭和がらん ・べんじゃさん ・でんじだん(今はない) ・さんかくでまち ・寺田 ・ごんだ ・かんのんだ ・つつみした ・しかせんがらん ・馬止松 ・長六田 (以上、地図中記載より入力者が追記)
*歴史に関する話 溜池の北の山の中のお寺にある、二股の杉の股の部分に捨てられていた子供が鹿に育てられ、それが和泉式部だったそうだ。そのお寺には有名な「幽霊のかけじく」というものがあるらしい。
*水利権について 梅ノ木谷溜池からは湧き水が出ており、有明町全域で水を取っている。現在は地下水路を利用。44年の圃場整備までは地上の川を利用していた。その川はとてもきれいで、しじみや蛍などがいたそうだ。 水路の名前は地図の通り。 ・南水路 ・北水路 ・中水路 ・地鎮(放水)路 (地図中記載より追記:入力者) 昔は上田野上の人には水の特権があって、他の地区に水がない時でも溜まった水をもらえたそうだ。しかし今は水路が地下なので自由に水を流せない(モーターを利用)ため、水の特権は使われていないらしい。溜池にあまった水のことをあまし(のこし)と呼ぶ。←人によって違う。 昔はどろぼう水といって、他の田ん中の水を横取りする人がいたので、溜池番が家(上田野上では稲富さん宅)に泊まり込みで見張っていた。一分単位で鐘を鳴らして放水していたらしい。
*旱魃について 昨年は溜池番が計画的に放流していたので、溜池が空になることはなかったそうだ。溜池の年間放流を計画している溜池番のことを「ふうつうさん」と呼び、夜中でも水路が空にならないよう見て回った人を水当番と呼んだ。
*今後の日本農業への展望 町に工場などがないため、他の町へ勤めに出る人がほとんど。 田ん中が小さく、お米だけでは食べていけない。(裏作として麦、玉ねぎ、豆などを作り、4軒ほどハウスでいちごを作っているらしい。) 上田野上は小百姓なので農協に田ん中を委託するという話もある。 水を地下で取り過ぎたため地盤沈下が起こっている。(行く途中の道のでこぼこはそのため)
*その他のお話 田ん中の中の土の山のことを「うね」という。 田ん中のことを「からみ」といい、それにちなんだしこ名(ex.昭和がらん)も多くあるという。 昔は海だったので、船着き場にちなんだ「はつほざき」というしこ名もある。 しこ名は大抵土地の大地主や金持ち、建物や貢献した人の名から付けられている。たとえば「しかせいがらみ」はその田を作った鹿太郎さんと清六さんからとった、というふうに。他にも悪名高い酔っ払いの長六という人にちなんで、その人の家の前の田ん中を「ちょうろくでん」、前の道を「ちょうろくみち」と言ったそうだ。「寺田(てらだ)」は小作人が使っていた田ん中だそうだ。
*土地のこと 上田野上と下田野上は入り交じっている。(はっきり分かれていないらしい。)山の近くは47年に人力で整備された。有明町、中でも田野上は整備が早くにできていた。 1つの区画に30人ぐらいの人が耕作していた。
*感想 ほとんどの家が不在で、しこ名はあまり聞けませんでした。お話が聞けた方はとてもいい方ばかりで、お話をしている間に田んぼのことを自然に「田ん中」と呼べるようになり、深く交流できた気がしました。 |