服部英雄のホームページ

福島民友 2012年8月4日(土曜日)

@BOOKカフェ 大国魂神社宮司 山名 隆弘さん 服部英雄著 「河原ノ者・非人・秀吉」 著者は九州大大学院教授で、歩いて、見て、聞く歴史学者。著者は3月に訪ねてきて、い わき市平・薄磯の民宿に泊まった。夜更けまで地酒を楽しみつつ、昨年3月11日のこと を聞き書きしていった。その後、福岡県に戻った著者から本書が送られてきた。 25年前、県文化課(当時)に勤務していたころ、文化庁記念物課の調査官だった著者を 案内して県内をよく歩いた。枕頭(ちんとう)にはいつも分厚いノートがあって、丹念に 書き込んでいた。文献史料のほかに、地名や民間伝承、遺跡の現場などを大切にしていた。 本書は、差別される者のありようを中世史の中で克明に描いている。特別な感情を混入さ せず、人間として平等な視座を据えている。中世の武芸、犬追物に使役された雑多な犬を も写し出す。白拍子の女人像も描いている。驚くべきは底辺の階層から頂点まで上り詰め た豊臣秀吉の2人の子についての断言。状況証拠を重視して導き出した、机上だけでは生 産不可能な著者の論述に目まいさえ覚えた。既成の論理にとらわれず、物事を多面的に心 を自由にして幅広く情報を得ることの重要性を本書から読み取った。

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