現地調査のためのマニュアル(改訂) 030528改訂HAT 目的(全学教育の観点から) 1 現地は圃場整備(機械化に対応した耕地の大規模化)や、過疎化、ダム 建設で相当な変化があった。こうした変化に際し、失われたものを記録し、記憶 する。すなわち以前の状況を記録に残す作業を行う。その作業を通じて 半世紀前に青春を過ごしたひとたちの生活と、現代の生活の差を考える。直接 にたずね質問する中で、先輩たちの過去の暮らしを考え、またそれ以前の人々 たちの暮らし(歴史)を考え、さらに自分たちの暮らし(現在)を考える。ガス のなかった時代、電気のなかった時代、マッチを使わなかった時代、牛や馬が トラクターであり、車だった時代を考える。青春を戦争のなかに過ごし、 肉親、愛する人を失った人たちの気持ち、それぞれを追体験するなかで、現在 を考える。 2 学問には机上の学問と、実際の現地での学問がある。調査では現地が研究室 となる。書を棄てて野に出でよう。 3 調査は机上の勉強とはまったくちがう。実際に聞き取りをさせていただく 方と、事前に連絡を取り、調査がスムースにいくように段取りをする。 どのような人が適任か、みしらぬ初対面の人にどうやってお願 いしたらいいのか。もしも事前の折衝でうまくいかなかった場合にどう対応 するのか。調査の終了後、相手の方たちも君たちとよい時間が過ごせたと 思ってくださるように。社会に出たら経験しなければならないことの縮図 であり、すべてが勉強。 4 地図の読み方ほか手元で入手できる資料の扱い方や情報の読みとり方・ 整理の仕方を学ぶ。 5 よいレポートを書くこと。レポートは後世への記録として保存する。平成1 5年の夏にしか記録できなかった事実を残す。有益な情報を整理 してわかりやすく、かつ臨場感を持って書く。 ----------------------------------------------- 1聞き取りの導入部・設問は記憶を呼び起こすためのドアと考えてください。 きょうはこの地域のむかしの様子、暮らしをおうかがいにきました。これがこの 区域(むら)の5000分1地図です(地図1)。それからこの一覧はこの 地域と周辺の地名です。まずここに書かれた地名、小字やあだな(しこな、 ほのぎ)はご存じですか。最初に読み方、それからその位置を教えてください。 --------------------------------------------------------------- 参考資料(事前に渡します、また事前に先方にも郵送しておく) 筑紫野市----1福岡県史資料2大宰府旧跡図(該当地区の地名は各自書き出 しておく) 基山町------雑誌「すみか」からのコピー---明治7年の「基山の地名」 厳木町------厳木町の地名からコピー 七山村------特になし(小字一覧と先輩のレポート程度) 北方町------北方町史から江戸時代検地帳地名・コピー 武雄市------朝日区は明治初期の杵島郡朝日村史のコピー、それ以外は特にない 福富町------佐賀県干拓史からコピー ほかにこの一覧や小字の地図に書かれてはいないが、みなさんが使っていた地名 (通称)はなかったでしょうか(*これはかなり重要な質問になります)。 (山の場合)むらの田んぼにそういう名前はなかったですか。圃場整備の前の田 にはどんな名前が?むかし山の中に田んぼはありましたか。どんな名前で呼 んでいましたか。谷の名前は?川の瀬や渕、滝には名前はなかったでしょうか。 井手(井堰)にはどんな名前が、用水はなんという名前ですか。池 はなんといいますか。橋にはどんな名前がついていますか。そういう名前 はほかになかったですか。------ 古賀(小集落)の名前は。------ 家に屋号はついていましたか。------- 大木や岩に付いた名前、ふるい道や峠に名前はついていましたか。------- 地域の範囲はどこからどこまでですか。-------- (海辺のむらの場合)浜とか堤防、樋門の名前は。樋門、トドロ、マネキは? 新地(干拓地)の名前は? 「たお」や「す」には名前は(たおは海の中の川。干潮にも海。すは海の中の 小高いところ、干潮には陸地)。また川の一部に名前はありましたか (「あらこ」とか「わんど」などとよぶ川の流れによってできた深みなどに名前 はなかっただろうか) <以上は地図に記入していく、地名は原則として音・カタカナで表記、先方の 人が漢字で教えてくれた場合は両方併記> そういった地名の場所に何か思い出はありますか。------- 聞き取りの展開 田んぼへの水はどこから引いていますか。川ですか、池ですか。川であれば、 なんという井堰からですか(なんという井手からですか)。50年前も、同 じでしたか。水の量は潤沢ですか。水争いはありますか。水を分けるうえで 特別のルールはありますか。---------- 旱魃の時の思い出は?平成6年の旱魃は?雨乞いとかの経験はありますか。 どんなことをしましたか。-- 台風予防の神事(風切り)などはありましたか。 用水路の中にはどんな生き物がいましたか、昔も今も変 わりませんか。------------ 田の中にはどんな生き物?川には?------------- 麦を作れる田と作れない田はありますか。むらの一等田はどこで、むかし (化学肥料の導入以前で)米は反当何俵でしたか。悪い田は反当何俵?麦は 何俵?そばは?------ (山の場合)何斗蒔きとか、何升蒔きとかいった田はありましたか。 あったとすれば田植えをせずに直播き(実蒔き)だったのですか。 (全般)むかしはどんな肥料を使いましたか、いまは?------------- 稲の病気にはどんなものが。害虫はどうやって駆除しましたか。-------- 共同作業はありましたか。ゆいといいましたか。かせいといいましたか(双方が 加勢するとユイ)。麦は作っていましたか。田植えはいつでしたか。 ゆいでしたか、お手伝いの早乙女はきましたか。あるいは早乙女 にいきましたか。--------- さなぶり(さなぼり・田植のあとの打ち上げ会)はありましたか。思い出 は?------------ 田植え歌は?もみすり歌は?あったら歌ってください(テープに録音する)。 飼っていたのは牛ですか、馬ですか。 えさはどこから運んだのですか?------------ 牛を歩かせたり、鋤をひかせるときのかけ声は?右へは?左へは?--------- どうやって手綱は操作しましたか。一本?二本?------ ごって牛をおとなしくするためにはどうしましたか(*雄牛がゴッテ牛、雌牛が ウノ牛) 馬は毎日洗いましたか。どこで---------(地図記入) 蹄鉄はしていましたか。馬の病気にはどんなものが?---------- 馬洗いはあるが、牛洗がないのはなぜ? 草切山(草切場)はありましたか?----------(地図記入) 薪はどうやって入手しましたか?---------(地図記入) (以下は山のむらの場合) 入り会い山(むらの共有の山、村山)はありましたか。どこに?--------- (地図記入) そこでどんな作業をしましたか。----------- 木の切り出しは・木馬・路引き(どびき・ろびき)・川流しはありましたか? 炭は焼きましたか、収入はよかったですか。焼いたとすれば自家生産ですか、 ヤキコでしたか。 山を焼くこと(キイノ・切り野、切山=焼畑)はありましたか。 何を作りましたか、何年間荒らしましたか。 ソバは反当何俵ぐらいですか?野稲は反当何俵ぐらい? キイノはなんという地名ですか?(地図に記入) キイノは民有地ですか、共有地ですか、国有林ですか? 草山を焼くことは?------- かご(楮・こうぞ・かじともいう、ちがうという人もいる)は取りましたか。 山栗は?カンネ(葛根)は?山の木の実にはどんなものが? ほか山の幸はどんなもの? 川にはどんな魚が。川の毒流しはありましたか?淵や瀬や滝には名前は? (全般) おかしは?干し柿の作り方、勝ちぐりの作り方・数え方(干し柿は「連」 であろう)を教えてください。 食べられる野草は?------- 食べられない野草は?------- 米はどういう風に保存しましたか?ひょうろう米(兵糧米、はん米・飯米) は?------------ ネズミ対策は?----------- 米作りの楽しみ、苦しみは? 昔の暖房は? 車社会になる前の道はどの道でしたか?-------- むらにはどのような物資がはいり、外からはどんな人がきましたか?行商人は? 魚売りはどこから?カマドのお経を上げる目の見えないお坊さん(「ザトウ」 さん)は?------- やんぶし、薬売りは? むかしは病気になったときはどこでみてもらいましたか。? 川原やお宮の境内に野宿しながら箕をなおしたり、箕を売りにくる人を見 たことはありますか?その人たちはどこからきたと考えられていましたか----- 米は麦と混ぜたりしましたか。何対何ぐらい------- 自給できるおかずと自給できないおかずは?----- 結婚前の若者たちの集まる宿(わかっもん宿・若者宿・青年宿)・青年クラブ はありましたか。男だけですか?そこでは何をしていましたか。規律は厳 しかったですか。上級生からの制裁とかありましたか---- 力石は?---干し柿を盗んだり、すいかをとったりは? 戦後の食糧難。若者や消防団が犬をつかまえてすき焼やナベにしたことは?犬 はおねしょの薬だと聞いたことがありますか(体がぬくもる)。 犬はどうしたらつかまりますか。---- 「よばい」はさかんでしたか。よその村からくる青年とけんかをしたりは?--- もやい風呂(共同風呂)はありましたか。 盆踊りや祭りは楽しみでしたか?祭りはいつ?----- 恋愛はふつうでしたか?------- 農地改革前の小作制度はどのようなものでしたか。----- 格差のようなものはありましたか。------ むかし神社の祭りの参加・運営は平等でしたか。------- この地区にガスがきたのはいつ頃ですか。電気がきたのはいつ頃ですか。 戦争はこの村にどのような影響を与えましたか?戦争未亡人や靖国の母 は?------- むらは変わってきましたか。これからどうなっていくのでしょうか。------ さらなる展開---話が先方のペースになっていくかもしれないが。 以上を質問する過程で、いろいろな話が出る。聞く方は関係ないとは思 わずにできる限り話をひろいたい。貴重な情報が含まれている可能性がある。 以上あげたものは最低限の質問項目だが、おとしよりのなかには訴 えたいことがあって、一生懸命に語る人がいるだろう。たとえば戦争の話など。 まわりにいる家族は同じ話をくりかえし聞かされて食傷している。それでつい 話す機会がなくなっているが、本当は君たちのような若者には語り伝 えたいのだ。兵隊には行かれたのですか。戦地はどちらですか。こちらからも 積極的に聞きたいものだ。男性だけでなく、女性も戦争未亡人や靖国の母 などまわりにはつらい戦争経験を持つ人がいた。積極的に記録を残したい。 最後には ありがとうございました。お生まれは昭和(大正?)何年ですか。 ┌─────────────────────────────────┐ │ 教師は教壇の上、大学の中にだけいるのではない。 │ └─────────────────────────────────┘ 2事前の準備 A,村の概要の把握 指示された調査対象の村について 1角川日本地名大辞典・佐賀県、福岡県(六本松図書館開架室) 2佐賀県の地名(平凡社、六本松図書館開架室) 予備知識としてその概要を調べる。こうした印刷物の内容そのものをレポート する必要はないが、関連して言及する。 B,5000分の地図の入手 地図類は極力6月13日か18日の授業時間中に配布したい。必ず受領 すること。また人数が多いので、手渡せない場合も出てくるかもしれない。その 場合は指示に従って、作成に協力してください。必要枚数が不足している場合は 原図をもとに各自コピーする。現地調査用と清書用の2セットが必要 になります。 必要な地図の範囲は割り当てられた村の範囲全部。隣の村(他の人に割り当 てられた地区)の位置までコピーしてあるか確認しておくこと。特に山は 思っている以上に範囲が広いので注意する。その村が市町村境までが範囲 であれば、そこまでコピーする必要がある。地図がなければ先方がせっかく話 してくれても、地図に落とせないということになってしまう。山も大事 だということ。また渡した地図をはさみで切ってしまう人がいるが、大きな地図 から情報を引き出すことがたいせつ。調査が終わるまで、カットしないこと。 地図には川、水路、谷(以上青)、主な尾根(緑色)、道路(茶色)、 送電線・高圧線(灰色)、墓地(こげ茶色)を、それぞれ線で色分けしておく (現地用、清書用とも、この色塗りは地図の理解を容易にするためのものです。 色は簡単に線で示す。全部塗ったりする塗る必要はない。調査対象外地区まで 塗る必要もない)。 *地図の記号を解説した凡例が地図には付いています(ふつうは右の欄外)。 それもコピーしておいてください。これに高圧線、墓地、石垣などの記号が解説 されています。送電線・高圧線は鉄塔の印とそれを直線で結ぶ線がある。 *道路と水路の区別の仕方。 道路は普通二本の線が平行線として書かれている。川や水路は太ったり、 やせたりしていて平行ではない。橋の記号に注目。橋の上を通るのが道、下を 通っているのが水路(天井川は別)。 *尾根(緑)と谷(青)の区別の仕方*山の場合 谷は川から続いている。川は一番低い。尾根は山頂から続いている。尾根は 高い。尾根は心持ち丸く描かれ、谷は鋭角に描かれる。 イ,25000分の1地図 目的地にたどり着いたり、現在の様子を知る上で必要。大きな本屋(丸善、紀ノ 国屋、三省堂など)や地図専門店、博多合同庁舎売店で売っている。一枚二九 〇円ぐらい。本当は各自で購入してほしいが、品切れになることもある。その 場合はコピーで済ます。閲覧は http://gazou4.gsi.go.jp/からできます 2,住宅地図 六本松図書館のカウンター(受付)前に配架されているので、各自で訪問先の 分と周辺をコピーする。住宅地図には住所の番号(地番)も記入してあります。 それを手がかりに目的の家を見つける(訪ねる本人の名前が出ているとは限 らない。親の名前、または子の名前が出ていることもある。番地も併記 されているから見当をつける)。 3,小字の位置の分かる地図・地名一覧。 小字は手渡された資料を基に聞き取り用の地図に記入しておく。通称地名・ しこ名が何という小字の範囲にあるのかが確認できる。過去に一度先輩たちが 調査したときの記録(収集地名の一覧)ももっていく。こうした資料は相手方 もほしがることがある。置いてこられるよう、余分にコピーしておいた方 がよい。 4,訪問先---どの地域を訪ねるかは授業中(おそらく6/4か6/6か6/11にな る)に一覧を張り出します。老人会会長、または区長か、公民館長ないしその 紹介者に窓口、話者になってもらいます(訪ねる地域によってまちまちなので 注意する)。役員から直接話を聞くか、または村に詳しいお年寄りを紹介 してもらうことになります。 5,事前の手紙 手紙を出してください。相手先は一部を除き老人会会長か区長。連絡 がうまくとれないこともある。もしも連絡がうまくいかなかったとしても、過疎 の村では人自体が少ないし、村の人たちもけっこう忙しい。当日に、その村で 情報を多くもつ人を探し当てるということも重要。 * 手紙を出す場合は君たちがいつ、何の目的で訪問するか、つまり何月何日の 何時頃に訪問し何を聞くかを明記する。バスはたいてい10時半前後 につくだろう。お昼時は避けたいが、時間がない。弁当を持参していき、 さっそく話をお伺いしても良い。最初に村をみておくことも有効。最後にバス をおりる人は12時近くなるかもしれない。 * 資料が多い場合は定形外の封筒になります。 相手の都合を聞く返信用はがき(発信者である君たちの住所が宛先 になっているもの)を入れる。念のため手紙が着いた頃に、確認の電話を入 れた方がよい。はじめから電話を入れる旨明記してあれば、返信用 のはがきはいらないことにはなるが、はがきを入れておいたほうが無難(ただし 一部地域は電話番号がわかりません。104(電話番号案内・有料40円)で 聞く。はがきには発信者である君たちの連絡先・電話番号を書いておくこと。 *相手先住所の番地がわからない場合、行政区を書いてください。自治公民館 長□□様でもよい。相手は地元の名士です。郵便配達のひとも、毎日同じ人に 配達しています。正確に書いてあればまず配達されるでしょう。郵便番号は掲示 します(郵便局のぽすたるガイド)。 訪問を依頼する手紙のひな形 (以下は 参考)------------------------------------------------------------------- 1山の地方の場合(福富町以外の大半) 拝啓 突然お便りする失礼、お許しください。わたしたちは九州大学の 年生で、 いま大学で歴史について学んでいます。このたび授業の一環として、 地域の昔 と今について調べるため、現地を訪問し、以前の古いむらの姿について皆さん方 からお話をおうかがいする計画を立てました。 そこで、もしできましたら 月 日の 時前後に さんのお宅を訪問 させていただきたいと思っています。お聞きする内容は、水田に付けられている 通称の地名や、あるいは屋号、谷や川の名前、用水井堰の名前、また昔の水利 のありかたや慣行、古道、また大正、昭和初期の村の姿、山の生活 などについてなどです。どうかよろしくお願いします。もしご都合が悪 いようでしたら、御近所の土地に詳しく、物知りのお年寄りのかたをご紹介 いただければ幸いです。はがきを同封しましたので、ご都合の良し悪しをお教 えください。 なお参考資料として地域の地名一覧を同封いたしました。 月 日 住所 名前 電話番号 2海辺の地方(福富町)の場合 拝啓 突然お便りする失礼、お許しください。わたしたちは九州大学の 年生で、 いま大学で歴史について学んでいます。このたび授業の一環として、地域の昔 と今について調べるため、現地を訪問し、以前の古いむらの姿について皆さん方 からお話をおうかがいする計画を立てました。 そこで、もしできましたら 月 日の 時前後に さんのお宅を訪問 させていただきたいと思っています。お聞きする内容は、水田に付けられている 通称の地名や、あるいは屋号、堤防や樋門(トドロ、マネキ)や川(アラコ、 ワンド)の名前、用水井堰の名前、またアオ取り(シオ入れ)など昔の水利 のありかたや慣行、古道、また大正、昭和初期の村の姿や生活 などについてなどです。どうかよろしくお願いします。もしご都合が悪 いようでしたら、御近所の土地に詳しく、物知りのお年寄りのかたをご紹介 いただければ幸いです。はがきを同封しましたので、ご都合の良し悪しをお教 えください。 なお参考資料として地域の地名一覧を同封いたしました。 月 日 住所 名前 電話番号 ------------------------------------------------------------------------------------ (「この手紙がついた頃こちらからお電話いたしますので、ご都合の良し悪 しをお教えください。」)など文案は適宜工夫する。また次の服部の手紙を同封 した方がよい。<君たちの手紙に同封する添え書き> -------------(以下を参考に作り直すか、メールの添付書類から引用して使用 する)-------- 拝啓 突然のお便り、申し訳ございません。私は九州大学の歴史学の教官 をつとめるもので服部と申します。私どもは以前より県内ほか各地の村の昔の 姿を記録にとどめる作業を、学生の皆さんと一緒に行ってまいりました。今回は 貴地域を対象として調査をさせていただきたく思っております。 そこでご多忙のところ恐縮ですが、6月 日の 頃に、学生 名がお訪 ねいたしますので、適宜、地名(とくに小字名以外の通称、私称地名)や水利 などの慣行、また大正〜昭和初期の村の姿、人々の生活などについて、お教え下 さい。またもしご都合が悪ければ、そうしたことに詳しい方を学生たちにご紹介 いただけますれば、幸いです。お忙しい時期に、一方的なお願いでまことに申 し訳ありませんが、重ねてよろしくご協力のほど、お願いいたします。 なおみなさまのお名前については、以前に貴教育委員会より教 えていただいたものです。教育委員会においても、この調査の実施については 報告しご理解いただいております。どうかよろしくお願 いいたします。 平成15年6月 日 〒810-8560 福岡市中央区六本松4−2―1 九州大学大学院比較社会文化研究院教授 *調査項目すなわちこのマニュアルの前半をあらかじめ先方に送っても良い。 原稿を加工したい人はマニュアル原稿を添付ファイルで送りますので、メールで 連絡下さい。 なお都合が悪いから別の日に来てくれといわれる場合もある。バスの互換は無理 です。その日がダメなら団体行動である旨説明し、別の人を紹介してもらう。 当日用意するもの 地図、資料、ノート、録音機とテープ(MD、ボイストレックも可)、 マニュアル、カメラ、雨具、弁当、お茶、財布、帽子、汗拭き、日焼け止め、虫 さされの薬 携帯電話は山では圏外の可能性がある。過信しない。 *九大から調査に来るということで、場合によってはかなり期待 されることもある(その逆に無視されることもあるが)。期待 にこたえられるようにしてください。 当日の服装については、お願いした家を訪問するのだから、常識の範囲 できちんとした格好をしていくこと。あまりに突飛なファッションはどうかと 思う。その日は一日まじめな九大生でいてください。女子 はいろいろなところを歩き回るからズボンの方がよい。 *テープはできるだけ持っていく。レポートを書くときに楽です。録音済みの テープ・MDには調査対象の地区(村)名と調査者の名前、調査の年月日を書 いて提出して下さい。替わりに未使用のテープ・MDを渡します。 ボイストレックの場合は添付ファイルで送ってください。 *ときどきバイトや深夜テレビで徹夜をしたあと参加する人がいる。相手の方 の話を聞きながらコックリコックリすることは、たいへんな失礼になる。万全の 体調で臨むこと。 バス利用の場合の当日の行動 Αグループ6月21日(土)9時集合・六本松本館前,15分出発 Bグループ6月28日(土)8時45分集合・六本松本館前,9時出発 Cグループ6月29日(日)8時30分集合・六本松本館前,8時45分出発 (班のパートナーがこなければ電話で確認を取る。急な事態が発生して パートナーが来ないこともある。地図を一人だけが持っていて、当日 あらわれないとなると、いつまでもバスが出発できなくなってしまう。地図は 1班に2枚作るのだから、各自が持つようにしたい。なおバスは満員に近い状態 になるので空席は順に詰めて、あとからの人は補助席に座る。 経路 Αグループ 六本松→都市高速→筑紫野IC→鳥栖道路→筑紫野市、基山町、 筑紫野市平等寺、萩原 Bグループ 六本松→都市高速→高速九州長崎道→多久インター→福富町→ 北方町→武雄市 Cグループ 六本松→都市高速→高速九州長崎道→多久唐津有料道路→厳木町→ 七山村 (コース図は配布する予定) だいたい10時半すぎ頃現地に着く。目的地はかなり広いので最初の人 がおりた後、最後の人がおりるまで1時間以上はかかる。後の方の人はおくれて 目的の村に着くかもしれない。遅い人は12時近くなる。 どこでおりたらよいのか。地図を見ながら今車がどこを走っているのか、常に 確認しておく。席が空いたら補助席の人はどんどん普通席に移って補助席を空 ける。 村に到着したら手紙を出してあった人を訪ねる。 ◎ 帰りは4時頃(予定)から来た道と逆のコースでバスが迎えにいく。来た道と 同じコースを走る。バスの通過時刻は地図に記入して渡します。多少の誤差は 出る。最後にバスに乗る人は5時すぎになるだろう。必ず降りた場所(その 反対側の路線)で乗って下さい。特別の行動をとる人は事前に服部の了解が得 ること。乗車予定位置にいなければ、事故の可能性も考えての対策を取 らなければならない。しかし原則として周辺を確認した後に、見切り発車 します。みんなが、バスを待って無駄な時間を過ごすわけにはいかないから。 ---------------------------------------------------------------------------------- ◎現地調査ダイジェスト版とポイント 何のための調査か 失われつつある通称地名を古老から聞き取り、それを記録して後世に残す。 そのほか記録されずに忘れられつつある昔の村の姿・記憶を記録する。 レポートに記載しなければならないこと *調査した学生の名前と学籍番号:別記事項として鉛筆で住所および帰省先。 それぞれの電話番号。 *聞き取りしたおじいさんおばあさんの名前と生まれた年(例:佐賀太郎; 大正5年生まれ) ---------------------------------------------------------------------------------- 村の名前,地名・しこ名(カタカナ)一覧 △△,(*向こうが漢字を教えてくれた場合は漢字も併記する、必ずカタカナを先 に書く)。 田畑,小字**のうちに-------,◇◇,□□、■■、◆◆ 小字△△のうちに--------◎◎、◯◯ ほか(宅地とか山林とか) 小字▽▽のうちに ---------------------------------------------------------------------------------- 必ず地図を付ける。住宅地図は参考資料。正式には5000分の1の 国土基本図、ない場合はそれに準じた地図を付ける。 *小字も記入する。しこ名の位置が正確なのか、確認するために必要。村の 範囲;地図に図示する。古道;地図に図示する。 ---------------------------------------------------------------------------------- 村の名前,使用している用水の名前,用水源,共有しているほかの村 △△,◎◎井手,△△ほか2カ村 昔の配水の慣行・約束事,昔の水争いの有無 水を全部とってはいけない。しがらの堰でせいて,++分水点で**村とよく 争った。その原因は-----。 下流にも水を流す。 ----------------------------------------------------------------------------------- △△井手,(以下同様に) ----------------------------------------------------------------------------------- 一日の行動記録と古老から教えていただいたことをレポート用紙 (パソコン・ワープロ)10枚程度に(分量が多い方が良い)。話してくれた 内容も多い方がよい。筋書きを追って整理した上での逐語記録(相手 がしゃべったとおりの記録)でもよい。なるべく多く書いてください。質問事項 に対する箇条書き風の、ビジネスライクな回答はよくない。写真は自由。 レポートの部数は各班(原則二人)で1セット3部。それぞれ以下のようにする 1:教官への提出分(これが正本)、地図<色の線塗り>も一緒に封筒に入 れる。テープのある場合は一緒に:正本の封筒には行った地区名、氏名、 学籍番号を書く。なお下書きは地図とともに成績が通知されるまで保存 しておくこと、服部が電話で質問する場合があります)。 2:教育委員会に送付する分(地図も含めコピーする、カラーコピー でなくともよい。):冒頭に朱書きで、北方町とか厳木町と明記する。 これはあとでまとめて服部が地元教育委員会に送ります。封筒不要。 3:お世話になったかたへの送付分(地図も含めコピーする):封筒に、相手の 郵便番号、住所、宛名を明記してください。お礼の手紙も同封して、開封 のままで切手を貼らずに提出すること。服部が今後のお願いの手紙などを添付 した上で発送します。封筒必要。九大の名前が印刷された大型封筒を使用 してください。服部が授業時(6月18日か20日)、または出発時かに渡 します。1、3は封筒に入れる。2は入れない。なお3の差出人は服部研究室の 名前になります。発送は成績評価・全体のレポート整理の後になるので、 かなり遅くなります。またお世話になった方が多くて、複数に出す必要がある 時は、その分も用意してください。 レポートはパソコンで みんなのレポートをパソコンでも保存したい。地図以外の本文は大学にある パソコンで入力する。できたら地図・写真も入力しよう。できるだけワード がよい。それ以外であれば、保存の際に別に「テキストで保存」をする。それをE メールでhatt@rc.kyushu-u.ac.jpに送ってください。関係のものは添付書類で 送る。送れない場合はフロッピーに入れて保存して、フロッピーを提出 してください。一号館の情報処理教室一三〇、一三五、一三六教室で作成また プリントができます。電算入力と、その電子保存が目的ですからプリント をして終わりにするのではなく、かならず保存してください(大学のパソコン ならフロッピーに保存)。レポート、添付書類のタイトルは「歩いて考える 歴史」とか「服部レポート」ではなく、調査に行った場所(筑紫野市平等寺、 武雄市朝日町中野のように行った地域の名前、市町村名ではない)の名前を付 けてください。レポートはかならずプリントアウトしたものを提出し、あわせて メール送信(できなければフローッピー添付)すること。プリントアウト してないと、成績評価から漏れるおそれがあります。フロッピー提出の場合は 新品と交換します。できるだけEメールで送ってください。今後レポートは内容を 適宜判断しつつ、服部のホームページ http://www.rc.kyushu-u.ac.jp/~hatt/index.htmlで公開していきたいと思います。 調査者であり、著作権者である君たちの名前は公表しますが、公開に支障のある 個人情報(住所や電話番号)は教官提出用のみに鉛筆・手書きにして記入 してください。レポートの内容についてたずねる場合があるので、電話番号は 記入をお願いします。また相手の話の中で、公開には支障のある内容、つまり プライバシーや差別に関する話題などが出ることもあります。省略 はしないでください。ただし公開の際に服部が判断し、公開に不適と判断した 場合はその部分を割愛することはありますが、みなのレポート にはありのままに書いておいてください。心配ならそこだけ手書きにすること。 このホームページには先輩たちのレポートも掲載してあります。また前回 までの旧マニュアルも掲載してあります(*従前のものの方が詳しい)。 「服部英雄のホームページ」 なお初心者はよく「保存」の際に失敗し、せっかく打ち込んだ文字が消 えてしまったりします。はじめに「保存」の方法をよく練習してから文字を打 ち込んでください。プリントアウトした後、保存せずに消してしまう学生が 毎年何人かいます。それでは電算入力した意味がない。くり返しますが、 電算入力の意味はパソコンで保存し、公開し活用していくためです。 地図 *正確に地図に聞き取った地名を落とせたか。せっかく教えてもらっても間 違った位置に記入していては、何の意味もない。 ◎地図には小字の範囲と小字、そして調べた通称地名を文字で記入する。番号 のみを記入する方法は見にくいのでさける。カラーコピーは長期間には退色 する。黒、赤の色鉛筆、サインペン、マジックなどを使う。糊で貼り付けると 何年かの後には劣化して落ちる。これもさけたい。「録音テープにあるとおり」 というような形でレポートの記載を省略しない。印刷されたレポートが基本。 レポートのポイント *事前の準備◎地図は地形図に小字を記入したものを、あらかじめ確認 してあるか(各自点検してください)。 村の範囲はきちんと包括したか(山は特に広い)。 住宅地図を用意したか。その他参考資料を用意したか。 地図をきちんと準備できたか。事前に把握したか。色線塗 りをきちんとしているか(水路、道路、高圧線。墓地)。聞き取るべき範囲を 十分カバーする地図を用意していたか。配布した各資料を調査者が事前に、 きちんと読んでいたか。マニュアルをしっかり読んでいるか。 *目的が十分、果たせたか。割り当てられた村をきちんと調査したのか。しこ名 (あざな・通称)というものを相手に理解してもらい、収集することができたか (調査する側が、調査の趣旨を理解していなければ、目的 をはたすことはできない)。*地名以外の調査項目をきちんと調べたか。 注意:レポートには事実の列挙だけではなく、それに対する話者の評価を (たとえば青年の行 動について「いいことばっかりじゃないんよ」、といったら、そうした事も含 めてレポートする。 またレポートは臨場感あふれるように。話者の発言もなるべくそのままに方言 も入れて書く。その場の雰囲気が分かるように。どっと笑ったとか、このとき 複雑な表情をしたとか、急に声を潜めたとか。みんなは一流のマスコミ人 になったつもりで。質が高く、読みやすい「ルポルタージュ」を書く。 レポートは事実に忠実に、そしておもしろく。みんなが味わったおもしろさを伝 えてください。 レポートの締め切り 調査後10日をめどとします。7月4日か9日の授業時間に提出してください。 フロッピー・テープ・MDは交換で新しいものを渡します。なおレポート本文と 地図、テープがバラバラになりやすいので、正本は封筒(袋)に入れて出して下 さい。テープは袋に入れて糊付けしておいてください。成績評価が出るまで、 地図及びレポートの原稿(下書き)は必ず保存して置いて下さい。 服部のメールアドレスはhatt* rc.kyushu-u.ac.jpです。メールでの質問には メールで対応します。レポートは必ず印刷物で提出する。服部の研究室は本館5 F33、電話は726-4612です。